SDGs目標のターゲットを考える 8.働きがいも経済成長も

SDGs17目標の8番目、「働きがいも経済成長も」。目標1~6が「発展途上国向けイメージが強い」(過去に書いた記事のとおり、発展途上国の概念は今は適切でないんだけどアジェンダの表現がこれなので)のに対し、目標8は先進国向け目標のイメージが強い目標のひとつ。本文は、「包摂的で持続可能な経済成長およびすべての人の完全で生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」で、先進国だけでもなくやっぱりすべての人なんだなと思える。日本のIT企業が重点課題=マテリアリティとしてあげたがる目標のひとつでもある。働きがいっていう広い概念でもあるので、ターゲットも10+2個と多め。

ターゲット8.1は国ごとの基準で見ての一人当たり経済成長率の持続という、ハードル高めな目標。後発開発途上国においては年率7%っていうかなり高そうな目標。コロナの影響で達成までの道のりが遠のいてそう。

ターゲット8.2-3は、持続的な経済成長を達成するための働き方や政策促進をもとに、大企業だけでなく中小零細企業の支援を目標としている。高付加価値セクター、労働集約型セクターへ重点を置くこと、多様化や技術の向上、イノベーションの実現や雇用創出・企業・創造性・イノベーション支援や金融サービスへのアクセス改善など、具体的な課題や支援策が盛り込まれている。IT企業、金融業界が選びやすいターゲットでもある。

ターゲット8.4は「持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組み」にもとづく経済成長と環境悪化の分断を図るという目標。これこそ先進国の大企業とかIT企業とかが選んでも良いんじゃないかと思う。第三次産業革命からこれまでの発展は環境を置き去りにしてきており、経済発展=自然環境悪化はセットだった。これを分断しよう、経済発展と自然環境保護を両立させようというのがこの目標。先進国主導のもとという言葉も明記されており、日本はより自分事で考える必要がある。

8.5以降、8.8までのターゲットは国・企業の経済成長や生産性からぐっと人の話に寄っている。対象は、健常者だけでなく若者、障がい者、奴隷、こども、移住者、女性、不安定な雇用状態にある労働者とまさに「すべての人」。生産的な雇用や人間らしい仕事と同一労働・同一賃金や(8.5)、就労就学職業訓練を行う人の割合増加(8.6)、強制労働根絶・奴隷制や人身売買、児童労働の禁止・撲滅(8.7)、労働者の権利保護や安全・安心な労働環境促進(8.8)と、人間らしい働きがいにつながる環境も整備していこうという目標。文章が長くて難しい表現もあるけど丁寧にみるとわかる。人身売買とか日本ではあまり関連なさそうだけど、ひとり親世帯や非正規雇用者はコロナ禍においてリストラや休業のマイナス影響をたくさんくらった、不安定な雇用状態にある労働者と言え、日本でも解決が迫られている問題である。

ターゲット8.9では持続可能な観光業促進が盛り込まれ、「雇用創出や地方の文化振興・産品販促につながる」という視点は地方創生にもつながる目標になっている。日本の地方自治体や社会企業家がターゲットとしやすい、取り組みやすい目標でないかと思う。

8.10のターゲットは金融機関の能力強化を通したすべての人への金融アクセス促進・拡大が目標となっている。フィンテックの進展によって、銀行がなく貯金の概念がない地域においてはスマートフォンをつかったモバイル金融が普及しつつある。日本においては災害時でも資産が守られ、停電時でも金融サービスにアクセスできる状況となるとまだ課題が残っている。銀行や保険など金融業界は取り組みやすい目標と思える。

8.aーbは、「貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)」の支援や「国際労働機関(ILO)」の仕事に関する世界協定の実施など、既存のフレームワーク活用をさらに進めることで、後発開発途上国や若年雇用につながる未来投資の手法が目標になっている。

目標8はジャンル分けも少し難しいけど、ひとつひとつ読んでいくとなんとなくわかってくる。日本企業は社内の経営基盤強化施策のひとつとしてこの目標を取り入れる傾向があるように思う。企業の社員の働き方改革やコロナ禍のニューノーマルと言われる施策でこの目標が取り上げられることが多い。労働組合関連や同一労働同一賃金のターゲットもあるから考えやすいのだろうな。事業としてやっている例でいうと、目標6の記事に書いたLIXILのトイレを地方で作る体制を整えることで現地に雇用を生んだりっていうのがこれに該当すると思う。自社内に閉じた目標でなく、こういう社会課題を解決しながら事業にするものをぜひ積極的に考えたい。

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