SDGs目標のターゲットを考える 2.飢餓をゼロに

SDGsの17目標2つ目は、「飢餓をゼロに」。このキャッチフレーズだけ見ると、目標1の「貧困をなくそう」と似ていると思われそう。正式文章を見ると、違いがわかりやすい。「飢餓を終わらせ、食糧安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。」これが正式な目標2。飢餓だけを言ってるんではなく、食料の安全性や農業について言及した目標であることがわかる。

貧困は健康や教育、就業などあらゆる面で影響を及ぼすけど、一番直結で影響を及ぼすのが飢餓。貧困をなくすことはもちろん最大の課題としたうえで、生命を一番脅かす飢えをなくすというのが目標2で解決しようとしている課題。

これも、キーワードだけパッと見ると日本には関係ないことに思えるけど、正式文章まで見ると、関連することがわかってくる。食品偽装、産地偽装、賞味期限改ざんや衛生管理に関する事件は毎年発生しているし、高齢化・生産人口減少の影響がいち早く訪れている農業の持続可能性が危ぶまれているのは昔から言われていること。

目標2のターゲットには、1年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにすること(2.1)や、5歳未満のこどもの発育阻害や消耗性疾患の課題を解決すること、あらゆる形態の栄養不良を解消すること(2.2)など、貧困が起因になる飢餓の解決を目指す一方、小規模食料生産者の農業生産性や所得を倍増させること(2.3)、持続可能な食料生産システムを確保して強靭な農業を実践する(2.4)など、これからの人口増加を見据えた食料生産体制の整備も視野に入っている。

日本をはじめとするいわゆる昔の先進国では、人口減少が大きな課題となっているが、世界的には人口は増加している。昔よりも技術が進化し所得が向上し先進技術が安価に普及できるようになり、極度の貧困状態にある人の数が減り、世界的な平均寿命が延びている。2050年までに、日本では9000万人まで減少するといわれている中、世界では90億人にまで増えると言われている。(今のままの生活では持続不可能と言われる所以でもある)

人口がいまより20億人以上増えると言われている中、今と同じ食糧生産体制では食料不足になることが見えているのが、2.3以降のターゲットに課題として表出している。

ターゲット2.5は種子・植物バンクを通じた遺伝資源と関連する伝統的知識へのアクセスやその利益の公正・公平配分が記載されており、1次産業の高度化も考慮に入れている。

1次生産者のIT化・工場野菜等の技術やその研修が急速に発展、普及していることも目標2に関連している。日本の農家の高齢化や後継者不足、生産緑地問題、生産者の定収入問題なども関連する。

農業は自分も関心が高まっている領域。IoTを使った生産管理は製品やアプリが乱立している状態。プラットフォーマーを目指すなら大企業なんだろうけど、スマートシティ構想に組み込むのも大企業なんだろうけど、通信技術がもっと発展して通信料が安価になり通信量が増えれば、今時点での業務アプリからライブ型情報発信型・エンターテイメント型になってくと思う。一部すでにできてきてる。そこまで見えてる生産者さんいたら仕事で関われたらいいなぁ。

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【SDGs目標のターゲットを考える】1.貧困をなくそう

SDGsにある17目標のうち、ひとつめの目標は「貧困をなくそう」。これはキャッチコピーのような翻訳で、正確には「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」というのが目標。

世界には、「絶対的貧困」と「相対的貧困」がある。

【絶対的貧困】

kristi611によるPixabayからの画像
kristi611によるPixabayからの画像

極度の貧困とも言われる。2018年の「The Sustainable Development Goals Report 2018」のデータによると、1日90セント(最近のレートで90円くらい?)未満で暮らす人々は世界で7億8300万人いる。1990年時点と比べると改善しているものの、まだまだ日本の6倍以上の人口が極度の貧困状態にある。これを終わらせるというのがSDGsの最大ともいえるミッションのひとつ。ターゲットの1.1には「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々とお定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。」とある。

【相対的貧困】

Shelley ShangによるPixabayからの画像
Shelley ShangによるPixabayからの画像

その国や地域の生活水準を下回る状態。国によって定義が異なり、ターゲットの1.2には「2020年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の人の割合を半減させる。」とある。日本では厚生労働省が相対的貧困を定義しており、それは「相対的貧困率の算出方法から、等価可処分所得の中央値の半分に満たない世帯」とされている。相対的貧困率は、以下のように算出される。

厚労省 相対的貧困率等に関する調査分析結果について よくある質問から引用
厚労省 相対的貧困率等に関する調査分析結果について よくある質問から引用

最近の等価可処分所得中央値は250万円弱ぐらい、日本ではその半分=125万円/年以下の所得の人たちがこの相対的貧困に該当する。年々微増傾向にあり、人口に占める割合は2015年で15.7%。7人に一人が相対的貧困状態にある。
日本の貧困状況を詳しく知りたい方はこちら

一見普通に生活しているように見えていても実はというのがあり、際どい年収の人の中には自分が相対的貧困状態にあると知らない、気づいていない場合もある。日本では人口が減っている中で、この割合が増えるということは、格差が広がっていたり、地域の環境や人口構成、社会環境も影響している。こどもの貧困、ひとり親世帯の貧困、高齢者の貧困、老後資金2000万円などなど、この相対的貧困に関わる話題は事欠かない状態。これをあと10年で半減させるというのがSDGsターゲット1.2。

現代は強力な資本至上主義によるいわゆる「金さえあればなんとかなる」時代。逆に言うと「金がないと何もできない」時代で、気候変動による災害や今回のコロナウィルスによる経済打撃など、あらゆる災害の被害を真正面からくらってしまうのが貧困層。そしてこの貧困の影響が、SDGsのほかの16個の目標にも大きく関係する。貧困が他の課題を生み、その課題が別の課題を生む負の連鎖の起点になっている。だからSDGsの一番最初の目標は「貧困の撲滅」となっている。

ターゲットは他にも、貧困状況にある人が何に対して困っているのかを説明している。社会保障や普遍的なサービスへのアクセス、平等な権利などがそれにあたる。

【こども食堂の取り組み】

Hans BraxmeierによるPixabayからの画像
Hans BraxmeierによるPixabayからの画像

日本だと「こども食堂」などの活動を通じて、子供に対し食事と学習の場、コミュニティを提供している人たちがいる。相対的貧困層もそうでない層も同じ環境で時間を過ごしていく中で、大人がこどもの危険や異変を察知し守るような体制。具体的にどこも応援できてないけどスバラシイ取り組みだと思う。自分が知らないだけで、きっと近くのエリアでもあるんだろうなぁ。

自分にできることはめちゃくちゃ小さいし急にすべてを解決するようなことはできないけど、できる範囲から応援していきたい。

SDGsの概観をつかむならコレ。企業に所属している人ならよりイメージがわきやすい、「なぜ企業にSDGsが必要か」の視点も網羅している。SDGs検定などの参考図書にもなっている教科書的な1冊。

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持続可能なまち

2015年9月に国連加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」。この中に記載されている17目標・169ターゲット・232の指標が、最近テレビやニュースでも取り上げられるようになってきた「SDGs(Sustainable Development Goals)=持続可能な開発目標」。

現在の地球には複雑で重要な問題が問題が絡み合い、解決が難しくこのままの生活を続けることができない状況にある。それは環境問題であったり、社会問題であったり、経済問題であったりなど、多岐にわたる。

『Factfulness』に寄れば、SDGsにうたわれている「先進国」「途上国」という分け方はもう厳密に定義できる状況にない。1日生活を送るのに必要な最低限の所得でみると、4段階の階層に分けることができる。日本やアメリカ、EUなどいわゆる「先進国」と言われてきた国々は、フェーズ4の階層にあたる。そしてここから見える景色は、東京タワーの展望階から地上を見るようなもので、フェーズ1~3の階層の違いはわからない。

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フェーズ1~3の状態にある国も、総じてフェーズ4に向かって発展を進めており、これらの人々がフェーズ4に移行し生活が向上することによって、現在の地球上の資源がさらに必要になると見られている。これが「持続可能でない」状態、地球が足りないといわれる所以。そのため、今の生活・今の資源をこのまま何も変えずに消費するのではなく、「変革=トランスフォーム」が必要だというのがSDGsの主旨となる考え方。世界中のリソースを17の大きな課題の解決に集中させるという言い方もできる。

2030アジェンダのタイトルは「Transform our world」私たちの世界を変革する。この変革とは、いわゆる「変化=change」とは異なり、さなぎが蝶になるような、抜本的な変革を意味する。既存の成長の延長線上には解決策はなく、2030年にありたい姿、野心的な目標を掲げ、そこからバックキャストで、実現するためにどうするかを考える方法論。

SDGsはこれまでバラバラに活動していた「より良い世界にしよう」と動いていたひとたちをまとめて共通目標とする力がある。ターゲット、指標はグローバルであり、一見個人には関わらないものにも見える。が、フェーズ4で生活を送っているほど、個人の消費行動が世界に影響を与えている。自分の身の回りの物が経済活動を伴わないものはごくわずかしかないはず。自分の場合は、自分でつくった作品しかない。他の物はすべてなんらかの経済活動が絡んでうちにある。そしてそのうち国産のものはどれぐらいあるか。海外製のものがあるということは、それをつくった外国の人の仕事や生活に影響を与えているということ。何千何万もの商品のうちのひとつであろうが、影響を与えていないとは言えない。これはフェーズ1~3の生活をしている人でも同じ。SDGsは誰にとっても自分事で考えることができるものである。

また、この17目標は、地球全体を持続可能にしていこう、というグローバルな視点・とても視野が高いものに感じられるが、どこかの政治家が言っていた「地方が良くならなければ、国が良くなるはずがない」ように、まずはひとつひとつの地方が持続可能になることも大事。地方が衰退して消滅している横で国がSDGsの目標を達成しました、というのはあり得ない。今日本政府が「地方創生×SDGs」と掲げていることも、そういった考えのもとであると信じている。それぞれの自治体、それぞれの地域が持続可能になること、持続可能なまちを増やすことが、ひいては地球全体の持続可能につながっていく。

「持続可能なまち」「エコシステム」「地域曼荼羅」いろいろな表現が出てきている。米沢市や置賜地方、山形県がありたい「持続可能なまち」について、考えていきたい。

つづく。