言葉の定義

言葉の定義は、ときには会話の前提でやっておかないとエライ目に合うこともある。

たとえば、「普通」。「普通だったらこうでしょ」「普通やるでしょ」日本人が大好きでよく言う言葉だと思う。でもこの「普通」は、個人の生きてきた人生観・価値観で大いに変わる。ジェネレーションギャップとかカルチャーショックと一緒、時代や土地によってぜんぜん異なる。その差は「普通」ではなく「文化」。「普通、(だから自分の考えは正しい)」とか「普通(はこうだから、お前が言ってることはおかしい」っていう会話は、まず前提を整理してからでないと、同じ言葉を使って違う会話をしててぜんぜん噛み合わない、てことが大いにありうる。

割と大手の新卒採用選考で一次選考でありがちなグループワークでは、書記役は通過の鉄板だってコツを聞いてよく買って出てたのを思い出す。初対面で会う学生同士、「進行≒リーダー≒発表者」「書記」「その他」が大きく分かれる役割。積極性評価という点ではリーダーが評価高そうだし、実際多少の加点はあると思う。書記は、メンバーの話をまとめながら書くことで、発表者に発表内容を誘導できる、実質裏リーダーというかそのグループワークを仕切ることができる。整理しながら書くのもコツがいるけど、そのひとつが言葉の定義。メンバーのバラバラな意識を、定義によって絞り込むことで凝縮したディスカッションをすることができる。

就職後の業務の中で言葉の定義を合わせる作業・機会がないなと感じる。そのために、同じプロジェクトをしていても噛み合わなくてうまくいかないこともある気がする。うまくいかないことの要因は一つとは限らず、それぞれが独立しているということも滅多にないから言葉の定義の問題だけとは言えないけども。ただ、職場では結構ないがしろにされる工程な気もする。「この部署はこれが普通だ」と言われ、議論の前に教えられる。作業ベースの新人なら理解するだけかもしれないけど、考えて決めることが仕事になってくると、少なからず業務に支障をきたすようになると思う。どうにかならんもんか。

「大きい」「小さい」の感覚の違い、「早い」「遅い」の感覚の違い、「ちょっと」の量、「普通」「一般的には」の定義、「豊かさ」「幸せ」の定義、「まち」の定義、「地域」と「地方」の違い、「みんな」の定義、「男」と「女」の境目。

学習指導要領にわざわざ解説本があるように、解釈・定義を説明する行為は必要だと思う。SDGsが書いてある「持続可能な開発のための2030アジェンダ」もそう。劇的な文章だけど、難しい表現も多い。日本語訳の代表的なものもあるけど、部分部分はふさわしくない表現もあるように思う。「女性および女児の「エンパワーメント」が「能力強化」とか。

定義をディスカッションするだけでも時間がかかる。でも時間かけずに分かり合うっていうのも結構無理がある話。

間違っちゃいけないのは、「平等」と「公平」は違うし、それは「普通」でもないこと。

仕事の中でも「定義」は大事にしたい。

言葉の定義が合わない、話がかみ合わなくてモヤモヤする、人間関係に困っているならコレ。漫画で読みやすい。共感できること多数。

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SDGs目標のターゲットを考える 10.人や国の不平等をなくそう

SDGs17目標の目標10番目は、「人や国の不平等をなくそう」。本文は、「各国内および各国家間の不平等を是正する」。

目標5でジェンダー平等があるけど、こっちはより広義なイメージ。目標5はジェンダー平等といいつつ女性の立場向上を中心に「多様性」を重視している。この目標10はいわゆる格差をなくすことを重視している気がする。

ターゲット10.1は「2030年までに、各国の所得下位40%の人口の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。」とあり、国内経済格差をなくすことが一番重要視されている。日本においても、所得格差の指標であるジニ係数(0に近いほど平等、1に近いほど格差が大きい)は2017年に0.5594という数字で、格差は大きい。

ターゲット10.2は年齢、性別、障がい、人権、民族、出自、宗教あるいは経済的地位その他の状況にかかわりなくすべての人のエンパワーメントと社会的、経済的、政治的な参加促進。これは「エンパワーメント」という言葉もあり、目標5に似ている。人種差別や宗教対立などの問題が関連すると思う。

10.3は、差別的な法律、政策、慣行を撤廃して成果の不平等を是正すること。日本でも男女雇用機会均等法ができるまでは差別的な法律があったんだと思う。そして日本がいまだにジェンダーギャップ世界ランキングでめちゃくちゃ低い位置にいるのは、法律をつくってもなお男女平等にならない慣行が続いているからだと思う。どこか遠い国の話、ではない。

ターゲット10.4は税制、賃金、社会保障政策などを導入して平等の拡大を達成すること。10.1にも紐づくのかもしれないけど、生活弱者は制度的に救済して平等性を保つということか。

10.5は、世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善、この規制実施の強化。これはおそらく金融市場の腐敗を防止するというか、強いやつがより強くなるのを防ぐとかかなと思う。

10.6は、グローバルな国際経済や金融制度の意思決定の場で開発途上国の参加や発言力の拡大、信用力・説明責任がある正当な制度の実現。
これも10.5に近く、お金がなくて立場が弱い国のエンパワーメントということだと思う。

10.7は良く管理された移住政策で秩序のとれた安全な移住や流動性の促進。平等で移住の話っていうのがあまりつながらないけど、移住した先でも疎外されないようにということなのかなんなのか。

ターゲット10.aは、世界貿易機関協定に従い、特に後発開発途上国に対する特別で異なる待遇の原則を実施すること。これは先進国や開発途上国に比べても、後発発展途上国にはより手厚い待遇をしなければ平等な状態にならないということなんだと思う。国連データによると、2010年から2016年の間に、小さな島で国土が醸成される開発途上国がゼロ関税率で輸出した製品が20%増加したとのこと。平等だからといって、島で構成されている貧しい国と陸でつながっている裕福な国の関税を同じにするのは平等ではないということか。公正と平等の違いかな。

ターゲット10.bは各国の国家計画に従い、ニーズが最も大きい国々への政府開発援助および海外直接投資を含む資金の流入促進。開発途上国が正しく発展できるための援助。政治が腐敗しているような国だと資金援助をしても政治家がプールして国民は貧しいままっていう話も聞くから、「資金」の援助はシビアにやる必要があると思うけども意図はわかる。

目標10最後のターゲットは、10.c移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げる。5%を超えるものは撤廃するという目標。国連データによると、2017年に記録された送金総額6130億ドルのうち、75%にあたる4660億ドルは低・中所得国が送金先になっているとのこと。送金コストの高さが、送金額の減少につながる。ビットコインみたいのは本来この送金コストをなくすというのも目的のひとつだったはず。手数料貧乏になっては意味がないからそこをなくして平等性を高めようということなんだろうけど、コスト回収元の金融機関?は反発しそうだなぁ。

目標10は大きく見ると経済格差、社会格差の是正を目標としている。これは日本でも訴えられだして久しい気がするので、なんとなく馴染みやすい目標群にも思える。ただ、いまだに解決していないから馴染みになってしまっている面もある。SDGsのターゲットは途上国向けの表現が多いし、もちろん日本に住む自分たちができることで途上国向けに何かっていう行動や意識を持つことも必要だけど、日本国内にも大きい問題があることは忘れちゃいけない部分。
平等であること、差別しないことは意識していても、自分の中の「当たり前、普通」の概念が他の人のそれと違った時に排他してしまう考えは無意識にやってしまうものだと思う。でもそれが不平等や差別のはじまりでもある。なんでもありの考え方である必要はないけど、「自分の考え方はこう、でもこれはたくさんある考え方のひとつ」と考えられるかどうかかなと思った。

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