SDGs目標のターゲットを考える 10.人や国の不平等をなくそう

SDGs17目標の目標10番目は、「人や国の不平等をなくそう」。本文は、「各国内および各国家間の不平等を是正する」。

目標5でジェンダー平等があるけど、こっちはより広義なイメージ。目標5はジェンダー平等といいつつ女性の立場向上を中心に「多様性」を重視している。この目標10はいわゆる格差をなくすことを重視している気がする。

ターゲット10.1は「2030年までに、各国の所得下位40%の人口の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。」とあり、国内経済格差をなくすことが一番重要視されている。日本においても、所得格差の指標であるジニ係数(0に近いほど平等、1に近いほど格差が大きい)は2017年に0.5594という数字で、格差は大きい。

ターゲット10.2は年齢、性別、障がい、人権、民族、出自、宗教あるいは経済的地位その他の状況にかかわりなくすべての人のエンパワーメントと社会的、経済的、政治的な参加促進。これは「エンパワーメント」という言葉もあり、目標5に似ている。人種差別や宗教対立などの問題が関連すると思う。

10.3は、差別的な法律、政策、慣行を撤廃して成果の不平等を是正すること。日本でも男女雇用機会均等法ができるまでは差別的な法律があったんだと思う。そして日本がいまだにジェンダーギャップ世界ランキングでめちゃくちゃ低い位置にいるのは、法律をつくってもなお男女平等にならない慣行が続いているからだと思う。どこか遠い国の話、ではない。

ターゲット10.4は税制、賃金、社会保障政策などを導入して平等の拡大を達成すること。10.1にも紐づくのかもしれないけど、生活弱者は制度的に救済して平等性を保つということか。

10.5は、世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善、この規制実施の強化。これはおそらく金融市場の腐敗を防止するというか、強いやつがより強くなるのを防ぐとかかなと思う。

10.6は、グローバルな国際経済や金融制度の意思決定の場で開発途上国の参加や発言力の拡大、信用力・説明責任がある正当な制度の実現。
これも10.5に近く、お金がなくて立場が弱い国のエンパワーメントということだと思う。

10.7は良く管理された移住政策で秩序のとれた安全な移住や流動性の促進。平等で移住の話っていうのがあまりつながらないけど、移住した先でも疎外されないようにということなのかなんなのか。

ターゲット10.aは、世界貿易機関協定に従い、特に後発開発途上国に対する特別で異なる待遇の原則を実施すること。これは先進国や開発途上国に比べても、後発発展途上国にはより手厚い待遇をしなければ平等な状態にならないということなんだと思う。国連データによると、2010年から2016年の間に、小さな島で国土が醸成される開発途上国がゼロ関税率で輸出した製品が20%増加したとのこと。平等だからといって、島で構成されている貧しい国と陸でつながっている裕福な国の関税を同じにするのは平等ではないということか。公正と平等の違いかな。

ターゲット10.bは各国の国家計画に従い、ニーズが最も大きい国々への政府開発援助および海外直接投資を含む資金の流入促進。開発途上国が正しく発展できるための援助。政治が腐敗しているような国だと資金援助をしても政治家がプールして国民は貧しいままっていう話も聞くから、「資金」の援助はシビアにやる必要があると思うけども意図はわかる。

目標10最後のターゲットは、10.c移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げる。5%を超えるものは撤廃するという目標。国連データによると、2017年に記録された送金総額6130億ドルのうち、75%にあたる4660億ドルは低・中所得国が送金先になっているとのこと。送金コストの高さが、送金額の減少につながる。ビットコインみたいのは本来この送金コストをなくすというのも目的のひとつだったはず。手数料貧乏になっては意味がないからそこをなくして平等性を高めようということなんだろうけど、コスト回収元の金融機関?は反発しそうだなぁ。

目標10は大きく見ると経済格差、社会格差の是正を目標としている。これは日本でも訴えられだして久しい気がするので、なんとなく馴染みやすい目標群にも思える。ただ、いまだに解決していないから馴染みになってしまっている面もある。SDGsのターゲットは途上国向けの表現が多いし、もちろん日本に住む自分たちができることで途上国向けに何かっていう行動や意識を持つことも必要だけど、日本国内にも大きい問題があることは忘れちゃいけない部分。
平等であること、差別しないことは意識していても、自分の中の「当たり前、普通」の概念が他の人のそれと違った時に排他してしまう考えは無意識にやってしまうものだと思う。でもそれが不平等や差別のはじまりでもある。なんでもありの考え方である必要はないけど、「自分の考え方はこう、でもこれはたくさんある考え方のひとつ」と考えられるかどうかかなと思った。

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SDGs目標のターゲットを考える 8.働きがいも経済成長も

SDGs17目標の8番目、「働きがいも経済成長も」。目標1~6が「発展途上国向けイメージが強い」(過去に書いた記事のとおり、発展途上国の概念は今は適切でないんだけどアジェンダの表現がこれなので)のに対し、目標8は先進国向け目標のイメージが強い目標のひとつ。本文は、「包摂的で持続可能な経済成長およびすべての人の完全で生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」で、先進国だけでもなくやっぱりすべての人なんだなと思える。日本のIT企業が重点課題=マテリアリティとしてあげたがる目標のひとつでもある。働きがいっていう広い概念でもあるので、ターゲットも10+2個と多め。

ターゲット8.1は国ごとの基準で見ての一人当たり経済成長率の持続という、ハードル高めな目標。後発開発途上国においては年率7%っていうかなり高そうな目標。コロナの影響で達成までの道のりが遠のいてそう。

ターゲット8.2-3は、持続的な経済成長を達成するための働き方や政策促進をもとに、大企業だけでなく中小零細企業の支援を目標としている。高付加価値セクター、労働集約型セクターへ重点を置くこと、多様化や技術の向上、イノベーションの実現や雇用創出・企業・創造性・イノベーション支援や金融サービスへのアクセス改善など、具体的な課題や支援策が盛り込まれている。IT企業、金融業界が選びやすいターゲットでもある。

ターゲット8.4は「持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組み」にもとづく経済成長と環境悪化の分断を図るという目標。これこそ先進国の大企業とかIT企業とかが選んでも良いんじゃないかと思う。第三次産業革命からこれまでの発展は環境を置き去りにしてきており、経済発展=自然環境悪化はセットだった。これを分断しよう、経済発展と自然環境保護を両立させようというのがこの目標。先進国主導のもとという言葉も明記されており、日本はより自分事で考える必要がある。

8.5以降、8.8までのターゲットは国・企業の経済成長や生産性からぐっと人の話に寄っている。対象は、健常者だけでなく若者、障がい者、奴隷、こども、移住者、女性、不安定な雇用状態にある労働者とまさに「すべての人」。生産的な雇用や人間らしい仕事と同一労働・同一賃金や(8.5)、就労就学職業訓練を行う人の割合増加(8.6)、強制労働根絶・奴隷制や人身売買、児童労働の禁止・撲滅(8.7)、労働者の権利保護や安全・安心な労働環境促進(8.8)と、人間らしい働きがいにつながる環境も整備していこうという目標。文章が長くて難しい表現もあるけど丁寧にみるとわかる。人身売買とか日本ではあまり関連なさそうだけど、ひとり親世帯や非正規雇用者はコロナ禍においてリストラや休業のマイナス影響をたくさんくらった、不安定な雇用状態にある労働者と言え、日本でも解決が迫られている問題である。

ターゲット8.9では持続可能な観光業促進が盛り込まれ、「雇用創出や地方の文化振興・産品販促につながる」という視点は地方創生にもつながる目標になっている。日本の地方自治体や社会企業家がターゲットとしやすい、取り組みやすい目標でないかと思う。

8.10のターゲットは金融機関の能力強化を通したすべての人への金融アクセス促進・拡大が目標となっている。フィンテックの進展によって、銀行がなく貯金の概念がない地域においてはスマートフォンをつかったモバイル金融が普及しつつある。日本においては災害時でも資産が守られ、停電時でも金融サービスにアクセスできる状況となるとまだ課題が残っている。銀行や保険など金融業界は取り組みやすい目標と思える。

8.aーbは、「貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)」の支援や「国際労働機関(ILO)」の仕事に関する世界協定の実施など、既存のフレームワーク活用をさらに進めることで、後発開発途上国や若年雇用につながる未来投資の手法が目標になっている。

目標8はジャンル分けも少し難しいけど、ひとつひとつ読んでいくとなんとなくわかってくる。日本企業は社内の経営基盤強化施策のひとつとしてこの目標を取り入れる傾向があるように思う。企業の社員の働き方改革やコロナ禍のニューノーマルと言われる施策でこの目標が取り上げられることが多い。労働組合関連や同一労働同一賃金のターゲットもあるから考えやすいのだろうな。事業としてやっている例でいうと、目標6の記事に書いたLIXILのトイレを地方で作る体制を整えることで現地に雇用を生んだりっていうのがこれに該当すると思う。自社内に閉じた目標でなく、こういう社会課題を解決しながら事業にするものをぜひ積極的に考えたい。

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