SDGs目標のターゲットを考える 14.海の豊かさを守ろう

SDGs17目標の14番目、「海の豊かさを守ろう」。本文は「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」。イメージがつきやすい目標だと思う。ただし、ただ海のことだけ考えれば良い問題ではない。例えば日本では2020年7月から始まったレジ袋有料化などをはじめとする「脱プラスチック」は、この海洋資源問題につながる。ターゲットにキーワードが出てこないけど、関連する問題はたくさんある。

ターゲット14.1は海洋堆積物や富栄養化を含むあらゆる種類の海洋汚染を防止し、それを削減すること。この「あらゆる種類の」がポイントだと思う。すぐ思いつくのは、重油とか、温度とか、ゴミとか。重油問題はこの前日本の船が海外領域で座礁して重油流出したのが問題になっていた。日本ではあまり大きく報道されていないようだけど、、ゴミによる海洋汚染の最たるものが、プラスチック。クジラとか海洋生物の死体のおなか開いたらビニール袋が大量に出てきた、とかあまり珍しくない話になってしまった。ビニール袋だけでなく、5ミリ以下のプラスチック=マイクロプラスチックも、生物の体内に入って同じことを起こしている。

14.2は、海洋と沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避し、健全で生産的な海洋を実現・回復するための取り組みを行うこと。海洋資源の中で特に生態系に注力した目標。14.3は、海洋酸性化の影響を最小限化し対処すること。世界の海洋および沿岸の海域調査によれば、現在の海洋酸性度は産業革命から平均約26%増加している。大気中のCO2量が増えているが、海の中でもCO2増による酸性化が進んでいる。

ターゲット14.4は、乱獲や違法・無報告・無規制(IUU)漁業および破壊的な漁業観光の撤廃と、生物化学的特性によって定められる持続的生産量のレベルまでの回復。海洋を汚さないだけでなく、漁業に対する目標。最近日本でも、大企業の乱獲によって本来の漁場にたどり着いた魚が激減・品質が悪い状態になるなどのニュースが出ている。地球全体で、資源量と漁獲量をコントロールする必要がある。

ターゲット14.5は少なくとも沿岸域と海域の10%の保全。これはどういうことなのか、、今は10%も保全できていないのか、調べてみないとわからない。

14.6は、2020年までに過剰生産や乱獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制すること。ターゲット14.4で漁獲自体のコントロールを目標としているけど、これはその根源となる補助金を断つ目標。というかこんな補助金があるのか、と思ってしまうけども、トレードオフにつながるすぐには解決できない問題なんだろうなと思う。

ターゲット14.7は小島嶼開発途上国・後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益の増大。先進国からの提供だけでなく、開発途上国も自立できるようになろうという目標。漁獲だけでなく、観光資源としても持続可能を目指している。

ターゲット14.aは海洋技術の移転に関する「ユネスコ政府間海洋学委員会」の基準・ガイドラインを考慮した研究能力向上、海洋技術移転。14.bは小規模・沿岸零細漁業者への海洋資源・市場へのアクセス提供、14.cは「我々の求める未来」のパラ158のとおり、国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施し海洋と海洋資源の保全および持続可能な利用を強化すること。誰一人取り残さない=小規模・零細漁業者も取り残さない方法、アクセスだけでなく技術も。

これらの活動の結果を受けて、保護を受ける海洋生物多様性水域は広がってきており、重要な海洋生物多様性水域は2000年30%から2018年44%へと拡大している。これでとどまらず、より高い目標の達成が望まれる。
海資源に関する目標群。自分は内陸生まれで今の仕事も直接海に関係しない、少し縁遠くも感じる目標。だけど、無意識に捨てたプラスチックが風化してマイクロ化して海に流れ着いて海洋資源を汚染している可能性は大いにある。スーパーで買う魚の出どころが適正かどうかを知るすべは今の時代はまだ難しいけど、自分の生活によって発生するゴミの行く末はイメージすることができる。小さいことから変えていけると良いなぁ。

SDGsを正確にとらえるならコレ。SDGsの第一人者が語るSDGs採択の経緯や日本人が理解しやすいターゲット説明などを丁寧に説明している1冊。

SDGs(持続可能な開発目標) (中公新書 2604) [ 蟹江 憲史 ]

価格:1,012円
(2021/1/31 15:18時点)
感想(1件)

SDGs目標のターゲットを考える 9.産業と技術革新の基盤をつくろう

SDGsに17目標あるうち9番目は「産業と技術革新の基盤をつくろう」。いかにも先進国向けなニオイがする目標。本文は「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包括的で持続可能な産業化の促進およびイノベーションの推進を図る」。こうなると対象を明言していないことはわかる。これも、日本の大企業・IT企業・金融業界が選びたがる目標のひとつ。

9.1は、説明するよりそのままの訳を読むほうが分かりやすそう。
「すべての人が平等に安価にアクセスできることを重点においた経済発展と福祉の実現のため、信頼できる質の高い持続可能で強靭なインフラ(越境インフラを含む)を開発する。」
経済の発展と福祉を実現する持続可能なインフラ開発。これはソフトともハードとも明言されておらず、両方該当する「社会インフラ」と考えられる。ハードインフラの強靭さも重要だし、現在およびこれからの情報化社会の中ではソフト面のインフラも強靭でなければ持続しない。

ターゲット9.2は包摂的で持続可能な産業化の促進、各国の雇用とGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させるとある。ここで言っている産業セクターとは、第一次~三次産業、六次産業のどれを指しているんだろう。原文読んだほうが良いべか。。産業って、産業革命をイメージすると工業かなと思うけども。

9.3は、金融サービスやバリューチェーン、市場への統合に対するアクセス拡大が目標になっていて、金融業界よりの目標に見える。「特に」につづいて開発途上国が強調されている。マイクロサービスが成長していけるための支援をしましょうという感じか。

ターゲット9.4では、資源利用効率の向上、クリーン技術、環境配慮技術や産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善による持続可能性の向上が目標。ただ単に生産性を向上して環境に悪影響を及ぼすものはもうダメで、社会や環境を良くすることと両立するような開発をしましょうという目標。先進国が先進技術を持って取り組むことができる目標、既存のビジネスをこの方向に変えていくべきターゲットだと思う。

国連データによると、全世界の炭素強度(エネルギー消費量に対する二酸化炭素排出量)は2000年からの15年で付加価値1ドルあたり二酸化炭素換算で0.38kg→0.31kgに19%低下しているそう。トヨタとかはゼロエミッションを目標に掲げて取り組んでいる。1ドルあたり300gと考えるとなんかまだ多い気もする。単に減らすことを努力してもゼロにはならないので、「減らす」を目標にするのではなく「0にする」を目標にすることで、イノベーションが生まれる。

ターゲット9.5はすべての国の産業セクターにおける科学研究の促進によって技術能力を向上させることが挙げられている。先端技術や知識を備えて応用できる研究者・開発者・技術者が多いほど、生まれるイノベーションも多くなるでしょうということか。こういった人材はすぐに育てられるものでないので、企業にとっては長期間にわたる投資の覚悟が必要になると思う。

9.a、9.b、9.cのターゲットはいわゆる途上国向けに、金融・テクノロジー・技術の支援強化を行い、その持続可能で強靭なインフラ開発を促進すること、それらの国の国内技術開発、研究およびイノベーションを支援すること、情報通信技術へのアクセス向上が目標。これらの途上国を支援するのは誰か?先進国でしょうね。日本も、グローバル展開してなかろうとも意識したら良いとこでないかと思う。顧客が日本国内に閉じてても、オフショアなんかしていれば立派な当事者。

ターゲットまで見ていくと、先進国はイノベーション力があるんだからそれを活用して社会にも環境にも配慮したより強靭なインフラの基盤をつくりましょ、それを自国のためだけに使うんでなく途上国の力を伸ばすとこにも活用しましょっていうことが書いてある。目標9でも、LIXILのトイレの件は大きく貢献している。これからの「支援」は、ただ寄付するとかあげるだけでなく売るだけでもなく、現地に雇用と生産体制をつくって地産地消できるサイクル・ノウハウや知識を提供するところにある。お金の寄付は政府が腐敗しているので市民に届かない、だから服などの現物支給のほうが良いという話も聞いたことがある。現物支給も一時しのぎにはなるけど根本解決にはならないので、支給するならミシンと布をっていう話も聞いたことがある。豊かな人のいらないものを貧しいひとに与えるという支援は、もしかしたらなくなってくるのかもしれない。

企業がSDGsに取り組むときの実践的な考え方を知るのに便利な1冊。

SDGsビジネス戦略 企業と社会が共発展を遂げるための指南書 [ ピーターD. ピーダーセン 竹林 征雄 ]

価格:2,420円
(2021/1/31 14:24時点)
感想(1件)