SDGs目標のターゲットを考える SDGs.12つくる責任、つかう責任

SDGs17目標の12番目は、「つくる責任、つかう責任」。個人の消費者としての責任が問われる目標で、テレビとかメディアで良くみかける目標の一つな気がする。本文は「持続可能な生産と消費の形態を確保する」。このキャッチコピーは秀逸というか適格だなぁと思う。しかしターゲット見てくと意外と幅広い。そして、全員参加の必要性がとても感じられるターゲット群。

ターゲット12.1、12.2は、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)の実施、天然資源の持続可能な管理および効率的な利用など、最初の定義な感じで全世界の参加とまずこの天然資源をどうにかっていう目標が挙げられている。天然資源は、食料問題にもエネルギー問題にもつながり、ほかの目標との連動性がある。

12.3はいわゆるフードロスの削減。ただ削減するっていう漠然とした目標でなく、「2030年までに一人当たりの食料の廃棄を半減」と、期間と量まで言及している。ちなみに日本人の年間フードロス量は一人当たり年間5キロ、日本全体で300万トンと言われており、これは世界全体の食品排気量の1/3相当に該当する。そしてその大半が、まだ食べられる状態のもの。この廃棄されている分の量を世界に回すだけでも、とてつもない数の貧困層を救うことができるといわれている。日本人はほぼ全員、意識して即行動しないといけない問題。

12.4は化学物質やすべての廃棄物の管理の環境上適正なものにすること、化学物質や有害な廃棄物の大気、水、土壌への放出の大幅削減。天然資源を持続的に使えるようにすることと合わせて、人工的に作り出したものも含めて地球環境への影響を出さないようにというのがこの目標。原子力の取り扱いや自然には存在しえず自然環境に影響がでる化学製品などが該当しそう。

ターゲット12.5は、廃棄物の予防、削減、リサイクルおよび再利用による廃棄物の発生の大幅削減。フードロス、化学物質だけでなくそもそものゴミも減らしましょうと。日本のゴミ廃棄量もえげつない。川崎では1日数百万トンのゴミを海に埋め立て続けているし、少し前まで大量のゴミを中国やアジア圏に輸出していた。SDGsに対する海外の意識の高まりやコロナの影響もあり、今はあまり?輸出できていないが、その分日本中のゴミ一時保管所に大量のゴミが廃棄されずにたまっていてパンク寸前とのこと。これも大きい問題。個人のゴミ廃棄量も減らさないといけないし、例えば過剰包装とかもやめていかねば。

ターゲット12.6は大企業やグローバル企業に対する、持続可能性に関する情報の定期報告書への盛り込み。企業は会社としての責任を果たすだけでなく、その情報をちゃんと報告することが求められる。国連データでは、世界的に収益の大きい企業250社のうち93%が持続可能性について報告している。また、49か国の上位100社のうち3/4が報告している。この流れは今後も増加していくことが予想される。

ターゲット12.7は、持続可能な公共調達の慣行促進。これは国とか自治体とか向けなのかな。変なとことか怪しいとこから調達するんでなく、資源の調達元まで責任を持ってねということな気がする。

12.8は2030年までにすべての人が持続可能な開発および自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。物量として廃棄量を減らす取り組みだけでなく、そもそも調和した状態を意識し、正しい情報を持つという精神面?まで含めた目標。企業の適正な生産量はAIの販売予測とかで減らせるかもしれないけど、個人が無駄を出さずに買いものをしたり、廃棄せずに使い切ることは個人の意識によるものが大きい。だから全員が意識することを目標にしようということ。教育も必要そう。道徳なのか総合なのか、吸収されなければそろそろ学校教育の科目に「SDGs」とか「サステナビリティ」っていうのが登場しそう。

12.aは開発途上国に対する持続可能な消費と生産形態の促進の科学的技術的能力の強化の支援。ゴミ問題関係は先進国が圧倒的に排出しているので先進国向けの問題にとらえられそうだけど、開発途上国が将来今の先進国と同じ道を歩まないように支援しようという目標。先進国とは異なる発展の仕方を考えないといけない。

12.bは持続可能な観光業に対する持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法の開発・導入。目標11の文化遺産自然遺産の保護保全にもつながる、観光業による外貨獲得が地域の持続可能性を高める効果的な手段なんだろうな。で、持続可能な開発が観光業にどういう影響を与えているか、測定できるようにするというのがこの目標。

ターゲット12.cは、開発に関する悪影響を最小限にとどめつつの貧困層やコミュニティの保護、必要に応じた有害な慣例の廃止、化石燃料に対する非効率な補助金の合理化。開発途上国の法制度や補助金が、有害なものであったり持続しないものであったりするので制度自体を見直していこうというもの。これはもしかすると日本でも該当しそう。利権主義というかなんというか。

目標12は、個人の生活スタイルや企業の活動を含む、全世界での取り組みの本気度を試すような目標に感じる。個人の行動を結果に見えやすくすることで進捗が見えるかもしれない。自分はペリーの回に登場したプランターをコンポストにして、生ごみが相当量減った。相対的に燃えるゴミの量が減っており、ゴミの捨てる回数も減っている。課題はプラゴミ、どうにも削減しにくい。最近はレジ袋有料化によって、ゴミ袋用にビニール袋買うような本末転倒な状況になりかねないので、野菜や商品が入っていた袋をゴミ袋として代用している。袋ゴミ分は減らせているけどまだ微々たるもんなのでどうにかしたい。

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SDGs目標のターゲットを考える 11.住み続けられるまちづくりを

SDGsにある17目標のうち11番目の目標「住み続けられるまちづくりを」。文字通り、まちづくり。その本文は、「包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住を実現する」。まちづくりの定義というか、あり方を具体的に示している。

ここまでの1~10の目標の多くが個人や企業のような、ある意味「個」の救済や行動を示していたのに対し、ここで「まち」という規模目標が出てきた。
個の力の限界を地域で支えるというか、格差の発生を組織で防ぐというイメージにも感じるターゲットが並ぶ。

最初のターゲット11.1は「2030年までに、すべての人の適切で安全、安価な住宅および基本的なサービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。」スラムという言葉のインパクトが大きく、日本に関係ないんではと思いそうになるけど、~アクセスの確保までで言えばどの地域にも当てはまり、日本でもこれがクリアされている地域はそう多くない。あと「スラム」て、そういう表現しないだけで、いわゆる「あのスラム」みたいな場所と感じられないだけで、前の記事であった日本の「相対的貧困」の現場は日本の場合近しいものがあると思う。

ターゲット11.2は社会的に弱いと言われる立場の方のニーズに配慮した交通の安全性改善、持続可能な輸送システムへのアクセス提供。高齢化が巣数地方では、最近は免許返還後の高齢者など「交通弱者」への乗り合いバスや介護タクシーなどがすでに稼働している。「持続可能」とは、そのバス会社やタクシー会社がその運用を続けられるように、ちゃんと事業として成立させること。受益者負担は手っ取り早いけど、社会的弱者は想定的に貧困でもあり、そのやり方はやっぱ持続しなそうだなと考えると、その手段の実現は難しい課題だと思う。

ターゲット11.3は、あらゆる人を排除しない持続可能な都市化促進、誰もが参加して持続可能なまちづくりの計画管理。これは自分の目標にも近い。パイプドビッツという会社の研究所が行った「幸福度調査」では、まちづくりの様々な取り組みへ「参加」するほどその協力した人の幸福度があがるという統計結果も出ている。社会参加はコミュニティへの所属も同義であり、コミュニティのつながりが強い地域は誰かの異変にもすぐに気づくことができ、人のつながりの面でも持続可能になると思う。そのような場づくりが求められる。

ターゲット11.4は世界中の文化遺産、自然遺産の保護保全。この持続可能なまちづくりの目標には文化遺産、自然遺産も含まれる。重要な観光資源にいかに人がきて、金を落としていくかは地域の持続可能性に大きく影響するし、大事な目標、それもリスクでなく、チャンスととらえるべき前向きな目標。SDGsの目標群の中であまり触れられていない「文化」面に言及している数少ないターゲットでもある。

11.5のターゲットは、水害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、直接的経済損失を大幅に減らすという目標。このあと出てくる気候変動にもかかわる、日本でも毎年発生するようになった豪雨や台風直撃による水災害の被害を大幅に減らすというもの。日本にもめちゃくちゃ大きい課題。企業や自治体がいろいろ画策?対策?してるところと期待。

国連のデータによると、1990年から2013年にかけて、災害に起因する死傷者の約9割が低中所得国で発生している。災害が新たな貧困を生むという話はどこかでした気がする。そして災害が、貧困からの脱出を阻害する要因にもなっている。これを考えると、防災めちゃ大事。

ターゲット11.6は大気汚染や自治体廃棄物の管理への注意による、都市一人当たりの環境上の悪影響軽減を訴えている。国連の2016年の統計では、都市住民の10人に9人は汚染された空気を吸っており、約4200万人が大気汚染によって命を落としている。日本の約1/3の人口が大気汚染を理由に毎年亡くなっていると考えると、これも大きい問題。

11.7は、すべての人に対する安全で利用しやすい緑地や公共スペースへの普遍的なアクセス。なんとなく11.2や11.3と似ているが、交通アクセス、社会参加に次いで、「緑地や公共スペース」いわゆる公園とか公的施設へのアクセス。日本ではある程度の住宅街ごと?に公園つくりましょうとか公民館作りましょうみたいのがあった気がするが、そこにみんなが気軽に行けるようになりましょう的な感じか。

11.aは都市部と都市周辺部、農村部間の良好なつながりの支援。都市部の一極化や地域間格差を是正し、交流を促し、資源を分け合うような支えあうような施策や計画が求められる。経済・社会・環境面どれかに偏ることなくすべての調和を考える必要があり、「先進国が途上国を支える」とか「都市部が田舎を支える」とか一方的かつ上下関係があるものでないのが重要かつ注意が必要。

11.bは仙台防災枠組2015-2030に沿ったあらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施。2011年の東日本だ震災を受けて検討が始まり、2015年までに検討され開始した防災枠組み。地震や津波だけでなく様々な災害リスクを想定し、防災・減災対策を実施することが求められる。「あらゆるレベルで」というのがポイントに感じる。

最後11.cのターゲットは後発開発途上国における現地資材を用いた持続可能かつレジリエントな建造物の整備支援。先日もトルコ沖で地震があり、トルコやギリシャで大きな被害が出ている。建物の崩壊も多い。後発開発途上国は目の前に取り組まなければならない課題が多く、例えば建造物の耐震性や強靭性は優先度が低くなっている可能性がある。技術的な支援は行うが現地の資源でつくるというのもポイント。資源を輸入に頼るのは持続的でない。

目標11はキャッチコピーどおり、持続可能なまちづくりのありかたに対するもの、ハード面ソフト面両面からの施策、現状の改善だけでなく将来のリスクにも備えるものがあげられ、理想的なまちのありかたを問いているように感じる。これらの課題が解決された状態のまち、見てみたい。

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SDGs目標のターゲットを考える 10.人や国の不平等をなくそう

SDGs17目標の目標10番目は、「人や国の不平等をなくそう」。本文は、「各国内および各国家間の不平等を是正する」。

目標5でジェンダー平等があるけど、こっちはより広義なイメージ。目標5はジェンダー平等といいつつ女性の立場向上を中心に「多様性」を重視している。この目標10はいわゆる格差をなくすことを重視している気がする。

ターゲット10.1は「2030年までに、各国の所得下位40%の人口の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。」とあり、国内経済格差をなくすことが一番重要視されている。日本においても、所得格差の指標であるジニ係数(0に近いほど平等、1に近いほど格差が大きい)は2017年に0.5594という数字で、格差は大きい。

ターゲット10.2は年齢、性別、障がい、人権、民族、出自、宗教あるいは経済的地位その他の状況にかかわりなくすべての人のエンパワーメントと社会的、経済的、政治的な参加促進。これは「エンパワーメント」という言葉もあり、目標5に似ている。人種差別や宗教対立などの問題が関連すると思う。

10.3は、差別的な法律、政策、慣行を撤廃して成果の不平等を是正すること。日本でも男女雇用機会均等法ができるまでは差別的な法律があったんだと思う。そして日本がいまだにジェンダーギャップ世界ランキングでめちゃくちゃ低い位置にいるのは、法律をつくってもなお男女平等にならない慣行が続いているからだと思う。どこか遠い国の話、ではない。

ターゲット10.4は税制、賃金、社会保障政策などを導入して平等の拡大を達成すること。10.1にも紐づくのかもしれないけど、生活弱者は制度的に救済して平等性を保つということか。

10.5は、世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善、この規制実施の強化。これはおそらく金融市場の腐敗を防止するというか、強いやつがより強くなるのを防ぐとかかなと思う。

10.6は、グローバルな国際経済や金融制度の意思決定の場で開発途上国の参加や発言力の拡大、信用力・説明責任がある正当な制度の実現。
これも10.5に近く、お金がなくて立場が弱い国のエンパワーメントということだと思う。

10.7は良く管理された移住政策で秩序のとれた安全な移住や流動性の促進。平等で移住の話っていうのがあまりつながらないけど、移住した先でも疎外されないようにということなのかなんなのか。

ターゲット10.aは、世界貿易機関協定に従い、特に後発開発途上国に対する特別で異なる待遇の原則を実施すること。これは先進国や開発途上国に比べても、後発発展途上国にはより手厚い待遇をしなければ平等な状態にならないということなんだと思う。国連データによると、2010年から2016年の間に、小さな島で国土が醸成される開発途上国がゼロ関税率で輸出した製品が20%増加したとのこと。平等だからといって、島で構成されている貧しい国と陸でつながっている裕福な国の関税を同じにするのは平等ではないということか。公正と平等の違いかな。

ターゲット10.bは各国の国家計画に従い、ニーズが最も大きい国々への政府開発援助および海外直接投資を含む資金の流入促進。開発途上国が正しく発展できるための援助。政治が腐敗しているような国だと資金援助をしても政治家がプールして国民は貧しいままっていう話も聞くから、「資金」の援助はシビアにやる必要があると思うけども意図はわかる。

目標10最後のターゲットは、10.c移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げる。5%を超えるものは撤廃するという目標。国連データによると、2017年に記録された送金総額6130億ドルのうち、75%にあたる4660億ドルは低・中所得国が送金先になっているとのこと。送金コストの高さが、送金額の減少につながる。ビットコインみたいのは本来この送金コストをなくすというのも目的のひとつだったはず。手数料貧乏になっては意味がないからそこをなくして平等性を高めようということなんだろうけど、コスト回収元の金融機関?は反発しそうだなぁ。

目標10は大きく見ると経済格差、社会格差の是正を目標としている。これは日本でも訴えられだして久しい気がするので、なんとなく馴染みやすい目標群にも思える。ただ、いまだに解決していないから馴染みになってしまっている面もある。SDGsのターゲットは途上国向けの表現が多いし、もちろん日本に住む自分たちができることで途上国向けに何かっていう行動や意識を持つことも必要だけど、日本国内にも大きい問題があることは忘れちゃいけない部分。
平等であること、差別しないことは意識していても、自分の中の「当たり前、普通」の概念が他の人のそれと違った時に排他してしまう考えは無意識にやってしまうものだと思う。でもそれが不平等や差別のはじまりでもある。なんでもありの考え方である必要はないけど、「自分の考え方はこう、でもこれはたくさんある考え方のひとつ」と考えられるかどうかかなと思った。

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SDGs目標のターゲットを考える 9.産業と技術革新の基盤をつくろう

SDGsに17目標あるうち9番目は「産業と技術革新の基盤をつくろう」。いかにも先進国向けなニオイがする目標。本文は「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包括的で持続可能な産業化の促進およびイノベーションの推進を図る」。こうなると対象を明言していないことはわかる。これも、日本の大企業・IT企業・金融業界が選びたがる目標のひとつ。

9.1は、説明するよりそのままの訳を読むほうが分かりやすそう。
「すべての人が平等に安価にアクセスできることを重点においた経済発展と福祉の実現のため、信頼できる質の高い持続可能で強靭なインフラ(越境インフラを含む)を開発する。」
経済の発展と福祉を実現する持続可能なインフラ開発。これはソフトともハードとも明言されておらず、両方該当する「社会インフラ」と考えられる。ハードインフラの強靭さも重要だし、現在およびこれからの情報化社会の中ではソフト面のインフラも強靭でなければ持続しない。

ターゲット9.2は包摂的で持続可能な産業化の促進、各国の雇用とGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させるとある。ここで言っている産業セクターとは、第一次~三次産業、六次産業のどれを指しているんだろう。原文読んだほうが良いべか。。産業って、産業革命をイメージすると工業かなと思うけども。

9.3は、金融サービスやバリューチェーン、市場への統合に対するアクセス拡大が目標になっていて、金融業界よりの目標に見える。「特に」につづいて開発途上国が強調されている。マイクロサービスが成長していけるための支援をしましょうという感じか。

ターゲット9.4では、資源利用効率の向上、クリーン技術、環境配慮技術や産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善による持続可能性の向上が目標。ただ単に生産性を向上して環境に悪影響を及ぼすものはもうダメで、社会や環境を良くすることと両立するような開発をしましょうという目標。先進国が先進技術を持って取り組むことができる目標、既存のビジネスをこの方向に変えていくべきターゲットだと思う。

国連データによると、全世界の炭素強度(エネルギー消費量に対する二酸化炭素排出量)は2000年からの15年で付加価値1ドルあたり二酸化炭素換算で0.38kg→0.31kgに19%低下しているそう。トヨタとかはゼロエミッションを目標に掲げて取り組んでいる。1ドルあたり300gと考えるとなんかまだ多い気もする。単に減らすことを努力してもゼロにはならないので、「減らす」を目標にするのではなく「0にする」を目標にすることで、イノベーションが生まれる。

ターゲット9.5はすべての国の産業セクターにおける科学研究の促進によって技術能力を向上させることが挙げられている。先端技術や知識を備えて応用できる研究者・開発者・技術者が多いほど、生まれるイノベーションも多くなるでしょうということか。こういった人材はすぐに育てられるものでないので、企業にとっては長期間にわたる投資の覚悟が必要になると思う。

9.a、9.b、9.cのターゲットはいわゆる途上国向けに、金融・テクノロジー・技術の支援強化を行い、その持続可能で強靭なインフラ開発を促進すること、それらの国の国内技術開発、研究およびイノベーションを支援すること、情報通信技術へのアクセス向上が目標。これらの途上国を支援するのは誰か?先進国でしょうね。日本も、グローバル展開してなかろうとも意識したら良いとこでないかと思う。顧客が日本国内に閉じてても、オフショアなんかしていれば立派な当事者。

ターゲットまで見ていくと、先進国はイノベーション力があるんだからそれを活用して社会にも環境にも配慮したより強靭なインフラの基盤をつくりましょ、それを自国のためだけに使うんでなく途上国の力を伸ばすとこにも活用しましょっていうことが書いてある。目標9でも、LIXILのトイレの件は大きく貢献している。これからの「支援」は、ただ寄付するとかあげるだけでなく売るだけでもなく、現地に雇用と生産体制をつくって地産地消できるサイクル・ノウハウや知識を提供するところにある。お金の寄付は政府が腐敗しているので市民に届かない、だから服などの現物支給のほうが良いという話も聞いたことがある。現物支給も一時しのぎにはなるけど根本解決にはならないので、支給するならミシンと布をっていう話も聞いたことがある。豊かな人のいらないものを貧しいひとに与えるという支援は、もしかしたらなくなってくるのかもしれない。

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SDGs目標のターゲットを考える 8.働きがいも経済成長も

SDGs17目標の8番目、「働きがいも経済成長も」。目標1~6が「発展途上国向けイメージが強い」(過去に書いた記事のとおり、発展途上国の概念は今は適切でないんだけどアジェンダの表現がこれなので)のに対し、目標8は先進国向け目標のイメージが強い目標のひとつ。本文は、「包摂的で持続可能な経済成長およびすべての人の完全で生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」で、先進国だけでもなくやっぱりすべての人なんだなと思える。日本のIT企業が重点課題=マテリアリティとしてあげたがる目標のひとつでもある。働きがいっていう広い概念でもあるので、ターゲットも10+2個と多め。

ターゲット8.1は国ごとの基準で見ての一人当たり経済成長率の持続という、ハードル高めな目標。後発開発途上国においては年率7%っていうかなり高そうな目標。コロナの影響で達成までの道のりが遠のいてそう。

ターゲット8.2-3は、持続的な経済成長を達成するための働き方や政策促進をもとに、大企業だけでなく中小零細企業の支援を目標としている。高付加価値セクター、労働集約型セクターへ重点を置くこと、多様化や技術の向上、イノベーションの実現や雇用創出・企業・創造性・イノベーション支援や金融サービスへのアクセス改善など、具体的な課題や支援策が盛り込まれている。IT企業、金融業界が選びやすいターゲットでもある。

ターゲット8.4は「持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組み」にもとづく経済成長と環境悪化の分断を図るという目標。これこそ先進国の大企業とかIT企業とかが選んでも良いんじゃないかと思う。第三次産業革命からこれまでの発展は環境を置き去りにしてきており、経済発展=自然環境悪化はセットだった。これを分断しよう、経済発展と自然環境保護を両立させようというのがこの目標。先進国主導のもとという言葉も明記されており、日本はより自分事で考える必要がある。

8.5以降、8.8までのターゲットは国・企業の経済成長や生産性からぐっと人の話に寄っている。対象は、健常者だけでなく若者、障がい者、奴隷、こども、移住者、女性、不安定な雇用状態にある労働者とまさに「すべての人」。生産的な雇用や人間らしい仕事と同一労働・同一賃金や(8.5)、就労就学職業訓練を行う人の割合増加(8.6)、強制労働根絶・奴隷制や人身売買、児童労働の禁止・撲滅(8.7)、労働者の権利保護や安全・安心な労働環境促進(8.8)と、人間らしい働きがいにつながる環境も整備していこうという目標。文章が長くて難しい表現もあるけど丁寧にみるとわかる。人身売買とか日本ではあまり関連なさそうだけど、ひとり親世帯や非正規雇用者はコロナ禍においてリストラや休業のマイナス影響をたくさんくらった、不安定な雇用状態にある労働者と言え、日本でも解決が迫られている問題である。

ターゲット8.9では持続可能な観光業促進が盛り込まれ、「雇用創出や地方の文化振興・産品販促につながる」という視点は地方創生にもつながる目標になっている。日本の地方自治体や社会企業家がターゲットとしやすい、取り組みやすい目標でないかと思う。

8.10のターゲットは金融機関の能力強化を通したすべての人への金融アクセス促進・拡大が目標となっている。フィンテックの進展によって、銀行がなく貯金の概念がない地域においてはスマートフォンをつかったモバイル金融が普及しつつある。日本においては災害時でも資産が守られ、停電時でも金融サービスにアクセスできる状況となるとまだ課題が残っている。銀行や保険など金融業界は取り組みやすい目標と思える。

8.aーbは、「貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)」の支援や「国際労働機関(ILO)」の仕事に関する世界協定の実施など、既存のフレームワーク活用をさらに進めることで、後発開発途上国や若年雇用につながる未来投資の手法が目標になっている。

目標8はジャンル分けも少し難しいけど、ひとつひとつ読んでいくとなんとなくわかってくる。日本企業は社内の経営基盤強化施策のひとつとしてこの目標を取り入れる傾向があるように思う。企業の社員の働き方改革やコロナ禍のニューノーマルと言われる施策でこの目標が取り上げられることが多い。労働組合関連や同一労働同一賃金のターゲットもあるから考えやすいのだろうな。事業としてやっている例でいうと、目標6の記事に書いたLIXILのトイレを地方で作る体制を整えることで現地に雇用を生んだりっていうのがこれに該当すると思う。自社内に閉じた目標でなく、こういう社会課題を解決しながら事業にするものをぜひ積極的に考えたい。

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SDGs目標のターゲットを考える 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに

SDGs17目標の7番目は「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」。正式には、「すべての人の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」。化石燃料エネルギーでなく、安全で持続的に使うことのできる再生可能エネルギーを安価に提供してみんなで効率よく使いましょうっていう目標。

国連データでは、2000年から2016年までに、世界の電器にアクセスできる人の割合は78%→87%に増加している。電気がない生活をしている人の数は10億人を下回り、改善が進んでいる。

ターゲット7.1は、2030年までに、安価かつ信頼できる近代的なエネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保することがあげられ、ほぼ本文と同じ目標になっている。近代エネルギーとは化石燃料に頼らない再生可能エネルギーを指している。太陽光、風力、地熱、バイオマス、波力など現在さまざまな再生可能エネルギーの研究と普及が進んでいる。2016年時点のデータでは、世界の4割を占める30億人が、大気汚染につながる燃料やストーブを使って調理しており、課題になっている。原子力発電はCO2を出さないという点ではクリーンだけど、3.11の福島原発事故やその他原発関連の事故を見ると、その排水処理や使用済み核燃料の処分は持続可能でないことが分かったと思う。「信頼できる」エネルギーとは、大気汚染だけでなく人体への安全という意味も含まれている。有名な事例はパナソニックの「ソーラーランタン10万台プロジェクト」とか。

ターゲット2はエネルギーミックスによる再生可能エネルギーの割合の大幅拡大。上述した様々なエネルギーを組み合わせていこうという目標。ちなみに日本でも太陽光パネルの普及が進んでいるけど、まだ火力発電が占める割合が多く、少し前のニュースでは火力発電所に出資しているメガバンクが世界のメガバンクから叩かれ、出資を抑えられることがニュースになった。ESG投資のネガティブスクリーニング(ESGに悪影響を与える企業に投資をしない行動)の結果。

ターゲット7.3はエネルギー効率の改善率の倍増を目標としている。これは少しイメージが湧きづらいけど、最小資源で最大のエネルギーを出せるような感じかなぁ。効率が良くなれば、単位当たりのエネルギー費用が下がるので、安価に普遍的にアクセスできるようになるということだと思う。太陽光とか風力とか、再生可能エネルギーのエネルギー変換率はあまり良くないと聞いたことがあるのでこれをイノベーションで改善させようということか。

7.aは、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資促進、7.bではすべての人に近代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるようなインフラ拡大と技術向上があげられ、ともに持続可能なエネルギー提供の仕組みづくりについての未来投資が目標になっている。

目標7は他の目標に比べて少なめなターゲット数だけど、世界中の人へのアクセスを達成するには大規模なイノベーションや施策が必要になる。個人でできることでいうと、まずは使いすぎないこと、あとは電力自由化になっているので、再生可能エネルギーの売電をしている事業者に電気代支払先を変えるのもひとつの手段。ESG評価のポジティブ面(ESGに貢献している事業者への投資)とネガティブ面(ESGに悪影響を与える企業への支払い拒否)で個人の意思を示すことができる。

日本はエネルギーを安価に安全に使っており生活を送るうえで大きな問題はないが、上述したようにその生産方法は化石燃料に頼る部分が多く、課題である。また、災害時の脆弱性は水と同じく、毎年台風や豪雨で多くの地域が停電被害にあっていることも課題である。安価で信頼のできる近代的エネルギーに普遍的にアクセスできるというのはとてもレベルが高いことなんだなぁと思う。

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SDGs目標のターゲットを考える 6.安全な水とトイレを世界中に

SDGs17目標の6番目は「安全な水とトイレを世界中に」。正式な目標は、「すべての人の水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」。タイトル通りの目標。国連データによると、世界中で10人に3人が安全に管理された飲料水サービスが受けられておらず、10人に6人が安全に管理された衛生サービスを受けられていない、さらに8億9200万人が屋外排泄を続けている(2015年時点)。

人間の生活には水が欠かせない、その水の安全性が担保されていない人たちがたくさんいる。汚れた飲料水は感染症やその他病気を引き起こし、健康(目標3)を損ねる要因になる。また排泄の安全性は衛生面(目標3)や治安(目標16)にも関わる。安全な水やトイレへのアクセスが容易であること、安価であることは、たくさんの人に健康や平和をもたらす。目標6では、そのような水資源や衛生面に関するターゲットがならぶ。

ターゲット6.1は、安全で安価な飲料水への平等なアクセスを目標としている。日本の水道水の安全性は世界で見ても高レベルで、水道水をそのまま飲むことができる7つの国のひとつである。世界に目を向けると、安全に管理された飲料水を飲むことができない人も3割ほどおり、ジュースよりも水のほうが高い地域もある。安全で低価格な飲料水を誰でも飲むことができる状態を目指しているのがこの目標。日本は問題ないと思われそうだけど、日本の水道管設備は全国的に老朽化が激しく、更新工事が追い付かないと言われている。今後地域の過疎が進み、行政の財政難により水道設備の更新作業ができなかったり、過疎エリアに暮らす家までの水道インフラの整備ができないようになると、「すべての人の平等なアクセス」は達成できないことになる。海外の貧しい人の問題でなく、日本全国で直近で起こる問題なので真剣に考えなければならない。

ターゲット6.2は下水施設・衛生施設へのアクセス。屋外排泄をなくすことが目標。そしてより具体的に、女性と女児、脆弱な立場にある人々のニーズに特に気を付けるとある。屋外排泄はそこから流れたモノが川や整備されていない水路に流れ込み、下流にいる人がそれを飲み水として取水する、そして感染症などが発生するといったことが起きている。また、紛争地帯や女性の安全が確保されていない地域では、排泄時の無防備な状態を狙われることもあり、治安が悪いところでは命がけの行為でもある。日本においても、水道設備と同様、下水設備の老朽化は発生してくるので、6.1と同じような注視が必要だろう。数年前にLIXILがユニセフと共同で作った「SATO(Safe Toilet)」が話題になった。このターゲットの解決を目指して作られた製品。アジアやアフリカへ寄付し環境改善活動をしていたが、最近では各地域でこのSATOを生産する体制をつくり、現地の雇用を創出し(目標8)、安価で地域に販売しているらしい。

ターゲット6.3、6.4では、排水・投棄・汚染された水の排出を最小限にしたり再生利用できるようにすることで、世界的に水質を改善すること、また水の利用効率を大幅に改善して、持続可能な採取ができるようにすることが書かれている。地球にある水のうち97%が海水で3%が淡水らしい。この淡水を飲料水や農業・工場用水などで使っている。これから人口がさらに増えていく中で、必要とされる水の量も増えていくが、これまでと同じ使い方ではすぐに水不足になってしまう。というか水不足はすでに発生している。水質改善や汚染水輩出最小化には、イノベーション(目標9)が必要な領域に思える。

6.5には、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施することが記載されている。日本の場合は独立した島国なので、他の国と比べてあまり問題が起きにくいところかもしれない。大陸でつながっている国では、川や山で国境が分かれていたり、川の上流と下流で国境を跨いでいるような地域もあると思う。この統合水資源管理は、そういうことじゃないかなぁと推察。

ターゲット6.6では目の前の水資源だけでなく持続的に確保することも意識した未来向けの目標になっている。「山地、森林、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復」はそのまま、今だけでなく将来への持続性を考慮した目標と言える。また水資源だけに注目するのでなく、「生態系」とすることで水資源に影響を与える動植物の存在も同時に大事にしようという想いが伺える。木や草は水の中に酸素を取り入れたり浄化したりする。プランクトンや水系生物は水をきれいにしたり、自然の摂理を存続させる大事な要素である。外来種を持ち込まない、繁殖させない、など固有種への対処も含まれる課題だと思う。

ターゲット6.aでは、これらのターゲットの解決に向けた各国取り組みの中でも後手を取る地域が現れないよう、組織的な能力を向上させる(キャパシティ・ビルディング)支援や国際協力を進めることが目標になっている。また6.bはこれら「水と衛生に関わる分野の管理向上への地域コミュニティの参加を支援・強化する」ことが盛り込まれ、個人というよりも組織全体、地域全体の課題としてとらえること、それを支援することが志向されている。

世界的な課題として捉えると、日本に関係ないと思いがちになるけど、日本の社会インフラ一斉老朽化は何年か前から社会課題として認識されている。災害が発生すると断水が発生する状況も、残念ながら毎年起きている。これも持続的とは言えない。個人でできる行動としては、まずは無駄に水を使わないこと、あとは下水処理に負担のかかるものを流さないとか。もう少し考えると、適切な水資源利用で作られた製品を購入するとかもあるかもしれない。Tシャツ1枚に何百リットルてレベルの水が使われているとか、知識を得て行動に変えるのもひとつかもしれない。

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SDGs目標のターゲットを考える 5.ジェンダー平等を実現しよう

SDGsの17目標5番目は「ジェンダー平等を実現しよう」。正式には、「ジェンダー平等を達成し、すべての女性と女児の能力強化を行う」。この目標は少し賛否が分かれるところだなぁと思ってみている。そもそもジェンダーって、ウィキペディア先生には

ジェンダーは多義的な概念であり、性別に関する社会的規範と性差を指す。性差とは、個人を性別カテゴリーによって分類し、統計的に集団として見た結果、集団間に認知された差異をいう。ジェンダーの定義と用法は年代によって変化する。ジェンダーという概念は、性別に関して抑圧的な社会的事実を明らかにするとともに、ジェンダーをめぐる社会的相互作用をその概念自身を用いて分析するものである。

とある。
なにやら難しいけど、個人的見解としては、要は社会的に自分がどっちの性別で見られるかと、自分自身が感じる性とのギャップ。
この「社会的にどっちに見られるか」ってとこが賛否のポイントなのだろうなあと思う。LGBT界では一般的?になってる概念「性別はグラデーション」。
ただこのSDGsでは、そのあとに「女性の能力強化」とあるので意味合いが違ってきていると思う。LGBTの話は別の機会に。

日本でも世界でも、男女の格差はとても大きい。この問題に関しては日本は後発すぎるほど進展していない。先日の五輪旧会長の発言も然り、ジェンダーギャップ指数の世界ランクも2020年121位と、ビリケツレベル。もちろんG20なんかの中では断トツ最下位。会社の女性管理職比率とかは有名な話、地方に行くと未だに女性の教育機会がないとかある。世界で見ても、男の子は学校に通うけど女の子は水汲みに行ってて学校いけない、などから始まり日本同様、子育て家事は女の仕事で立場弱いなど、問題は多い。それを解決しようというのがこの目標5番。

ターゲット5.1では、助成及び女児に対する「あらゆる形態の差別を撤廃する」ことがきていて、あらゆるっていうところに、目標1「貧困をなくそう」の「あらゆる形態の貧困をなくす」と同じ重さを感じる。5.2-3は日本ではちょっと遠い印象だけど、人身売買・その他搾取・未成年者の結婚・早期結婚・強制結婚・女性器切除などの暴力や有害な慣行を撤廃することを目標にしている。表現からでも切実というか、え、そんなことあるのって思うことが(主に女性器切除)書かれているあたり、自分が知らないだけで深刻な課題なんだと思う。電車の広告でも、「10歳で結婚」とかあるけど想像がつかない。。

ターゲット5.4は日本のこと見て作ったんですか?と思うような、「無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価」することが目標になっている。評価するのが夫とかの主観でなく、「公共のサービス、インフラおよび社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて」というあたり、日本の状況に応じて誰がどう判断するのかはわからないけど、公共・社会保障政策などなど変容の余地が十二分にあるところだと思う。これは何も、夫が半分ちゃんと育児家事せいっていう話だけではなく、世の中には家事代行サービス等を生業にしているひとたちもいるわけで、家事にきちんと対価を払ってそれをやってもらうということも、「無報酬の認識・評価」なんでないかなと思う。金かけてっていうのはもちろん金持ちにしかできないことだけども、そこをもっとサービス受けやすくすることが公的支援のなせるワザかもしれないよね。

ターゲット5.5はこれもまた日本の話ですか、みたいな女性管理職の話。「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において完全かつ効果的な女性の参画と平等なリーダーシップの機会を確保する」。最近仕事でIT企業大手の統合報告書を分析してるけど、女性比率のまぁ少ないこと。女性管理職比率、世界で見ると24%ほどでまだまだ足りないと言われている中、日本平均は17%、今分析している企業群は、10%いくかいかないか程度。役員・監査に女性が一人もいない会社もある。そんな会社が重点項目でこの「ジェンダー平等」を掲げて多様性・働きがいのある会社って堂々と言ってたりする。SDGsウォッシュの絶好の標的になるなぁと思う。

ターゲット5.6には、「性と生殖に関する健康および権利への普遍的アクセスの確保」があげられている。これはそもそも無計画な人員増加で不幸な子を増やさないようにということなんだろうか。。NOと言える勇気、のまえに何がNOかを知識としてつけるため、ということなんだろうか。北京行動綱領を見れてないので、見てみなければ。

5.a-cは、女性や女児がその力や権利ちゃんと行使できる環境を整えましょうという施策が並ぶ。経済的資源についての権利・オーナーシップ・土地その他の財産・金融サービス・相続財産・天然資源にアクセスする権利や(5.a)、能力強化のためのICTをはじめとする実現技術の活用(5.b)、適正な政策や拘束力のある法規(5.c)がそれにあたる。あらゆる面で女性が不利にならないような環境を整備しましょうという目標。

先日、とある会社のSDGs研修を見たときに「女性の『能力強化』という表現に違和感がある。能力が劣っているわけではないでしょ」という意見があった。まぁ確かにと思い。この「能力強化」という訳、英語ではエンパワーメントと書いており、能力強化と別の意味では「権利をもつ」という表現もあった。おそらくこっちの和訳のほうがあっているというか、誤解は生まないのかもなぁと思った。教育による能力開発の機会が、男性に比べて得られていないことから「能力開発」という表現を使っている可能性もあるけども。男性と同じように持つべき権力を正しく行使できるようにするというのがSDGsで目指したい世界なのではと思う。

ここまで来て最初の話に戻ると、SDGsのキャッチコピーや正式目標では「ジェンダー平等」と言っているけど、ターゲット全般、主役は「女性および女児」と明記されているのが特徴。誰から見ての女性および女児か?まで定義されておらず、LGBT界はこの目標に性的マイノリティを当てはめているところもたくさんあるけど、個人的には性的マイノリティに対する課題はSDGsに正しく盛り込まれていないと感じる。これはまた別の記事で。

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SDGs目標のターゲットを考える 4.質の高い教育をみんなに

SDGs17目標の4つ目は「質の高い教育をみんなに」。正式な目標は、「すべての人々に包括的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」。教育は未来投資につながる重要要素。目標1~3で目前の命や健康の安全性が保たれた次に大事だとするこの流れには共感する。(SDGsは貧困があらゆる課題の根幹と言っているけど、目標の中でどれが一番とか大事な順とかって優先順位つけたりはしてないはずです)。

ターゲット4.1から4.6にかけては、年齢というか教育段階に分けて、男女関係なくすべての人が基本的・発展的な教育を受けることができる体制を整えたりそのケアをするという目標。国連データによると、世界における幼児期と初等教育の就学率は、2010年63%→2016年70%に改善している。それでもまだ地域によっては満足な教育機会が与えられていないこどもがいる。またこの目標群には大人も該当しており、職業訓練や人間らしい仕事に必要な教育も含まれる。どのようなレベルに対しても、教育を望む人にその機会を提供できるようにするのがこのあたりのターゲットになっている。

基礎的、最低限の教育が行われないことは、様々な問題を引き起こす。健康面では識字率が低いことによって、自分や大切な人に処方された薬を適切に服用することができなかったり、農薬などをどの程度撒けば良いのかわからず薬害被害にあったりといったことが起こる。また、仕事の面でも、就学していた人と比べて就労機会や選択肢が狭められる。仕事に就けない人は最悪の場合、戦争の兵士やテロリストの組合員になってしまうこともある。そのようなことを防ぐためにも、教育はとても大事な要素である。上杉鷹山が行った人づくり改革も教育だった。鷹山公は米沢藩のこどもに士農工商の階級分け隔てなく教育を施した。そこからその後の米沢や日本を作った偉人がたくさん輩出されている。社会の改善に、教育は必須要素だと思う。

ターゲット4.7では、「持続可能な開発のための教育」を行うことを目標としており、SDGsの概念を現代世代だけでなく次世代以降にも引き継ぎ、持続可能な社会を代々つないでいきたいという想いが伺える。このターゲットでは持続可能な社会に必要な要素として具体的に、「人権、ジェンダー平等、平和と非暴力の文化、グローバル市民としての自覚、文化の多様性への尊重、文化が持続可能な開発にもたらす貢献」について理解しそのような社会を促進するための知識やスキルをつけるとある。日本の教育機会の中でいうと、道徳にあたるのか総合にあたるのか、、最近の指導要領とか時間割がわからないけど、小学校では社会や英語の教科書に盛り込まれつつあると聞いた。もしかしたら国語算数理化社会英語SDGs、って時間割の1コマになる日もくるかもしれない。

ターゲット4.a-cでは、数字ターゲットを実現するために必要な手段として、すべての人が安全に学ぶことのできる教育環境の提供(4.a)や、貧困状態の人や公的教育機関等だけではまかないきれない資金援助としての奨学金の件数向上(4.b)、適切な教育を行うことのできる教員の増加(4.c)があげられている。たしかに、先生が教えられることがなかったら教育にならん。

教育は自分も興味がある分野。中高の免許は失効してしまっている気がするけども。。。美術免許だけではあるけど、アートという文化がなぜ必要や、生活にどんな影響を及ぼすか等知ることは大事じゃないかなぁと思う。芸術作品をつくるにも最低限の教育は必要なので、国語算数とかに比べると優先順位が低くなるという現実(ゆとり教育で時間数を減らされていった科目のひとつが図工・美術)が悲しい。芸術は質の高い文化教育なのかもしれないけど、それこそみんなに、機会があったら良いなーと思う。絵が上手く描ける必要はないけどたとえば会話のきっかけになるとか、ものの見方がわかるみたいな。あと道具を正しく使えるかとか。

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SDGs目標のターゲットを考える 3.すべての人に健康と福祉を

SDGs17目標の3つ目は「すべての人に健康と福祉を」。個人的には、キャッチフレーズとターゲットのギャップが大きい目標ベスト1。キャッチフレーズや正式な目標「あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。」から連想すると、健康経営とか福祉(子育て、介護、障がい者)の充実をイメージするけど、もちろんそれ関連のターゲットもあるけど、それより重視していることがたくさんある。

まず3.1、3.2のターゲットは、妊産婦・新生児および5歳以下の死亡率低下。世界では医療体制が整っていないため、妊婦が安心安全に子供を産める状況にない地域があり、そこではいまだに妊婦・新生児ともに命の危険がある。5歳児未満の予防可能な死亡(ワクチン接種で回避できる感染症など)は2000年990万人から2016年560万人まで減少しているものの、まだたくさんの救える命が救えていない状況。このターゲットは数値目標もついていて、より具体的・野心的と言える。

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Katja FuhlertによるPixabayからの画像

ちなみに日本でも、ターゲットの数値目標は達成しているとはいえ乳幼児の突然死や寝返りに気づかず窒息死などが社会問題になっている。

ターゲット3.3は伝染病の根絶と感染症への対処。3大伝染病のエイズ、結核、マラリアもいまだ根絶できておらず、マラリアに至っては2013年から2016年にかけで患者が増加している。温暖化が進み、マラリアの媒介になる蚊の生息地に変化が起きた場合、これまでマラリア被害のなかった地域でも発生する可能性がある。住友化学が、防虫成分入りの蚊帳をつくりアフリカへ展開するなどのイノベーション・社会課題解決事例も出ている。
またこのターゲットは、新型コロナウィルスもしっかり該当する。新型ウイルスが経済、環境、社会に及ぼす影響はここで言うまでもないかと。いつか整理したいけども。

ターゲット3.4、3.5、3.6、3.9と3.aあたりは現代?近代?特有の課題かなと思ったけど、昔からあるっちゃあることかも。3.4では非感染症疾患、3.5はアルコールを含む薬物乱用、3.6は交通事故死傷者、3.9は有害化学物質や環境汚染による死亡・病気件数をそれぞれ減少させることを目標にしており、3.aではたばこ規制枠組み条約の実施強化が盛り込まれている。3.4は感染症以外の疾患と考えるとめちゃくちゃ広い話になるけども、「精神保健および福祉を促進」から見ると、精神を病む人や自殺者削減もここに該当すると思う。タイヤメーカーが3.6の達成を掲げて事業していると聞いたことがあるけどこれは事業活動を通じた社会課題解決につながる事例だと思う。3.aのたばこ産業の市場規模は巨大だと聞くけど、JTはこれからどう事業を展開していくのか、気になるところ。あとはアルコールもたばこも、国が税金をかけている部分なので税収増やしたい国との折衝というか権力争いのようなことも起きそうだなと思う。2020年10月からはたばこと第三のビールが値上げになった。主幹産業および貴重な税収減と、SDGsの課題解決とのバランスがどこに着地するか?

ターゲット3.7や3.8は、性と生殖に関するヘルスケアの利用(3.7)や基礎的なヘルスケア・サービスへのアクセス、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(3.8)など、個人の人生設計の上での家族計画に関する情報や教育を行うことや、必要なときに適切な医療にアクセスできることが目標となっている。ターゲット3.1が目の前の課題への対応策とすると、この目標はこれから先3.1や3.2の状況になる総数を減らすような取組みだと思う。個人が尊重され自由な人生設計の中で子供を産む/産まないという選択肢がない人がたくさんいる。自分の、または子供や家族の具合が悪いときにすぐに医者に診てもらえる状況にない人たちがたくさんいる。医者が処置すべきは病院に来ることのできる目の前の患者だけでなく、病院に来ることができない人たちや、その環境にある。っていう考え方でアフガニスタンで殺された中村医師は医者業をしながら水路を引き、砂漠を緑豊かな畑に変えた。FACTFULNESSの著者も同じような考えだった。アクセスとは単に道路とかインフラの話でなく、情報だったり治療にかかる値段だったりも含まれる。薬に書いてある文字が読めるかどうかって話は次の目標の話で。ちなみにFACTFULNESS、家族の共著、お父さんがメインに進めてきたけど発行直前にお亡くなりになってしまった。彼の自伝に近いタッチで読みやすく、人生に絡めて事実と認識の違いや正しく事実を捉えることの大事さがわかりやすい1冊。

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ターゲット3.bはワクチンや医薬品の研究開発への支援とそのアクセスについて言及しており、これも新型コロナウイルスのことが当てはまる。新しい生活様式による暫定対応もあるけど、ワクチン開発とか世界中が今ここに集中投資して研究を進めているところだと思う。最近日本では感染が落ち着いている(慣れてきた、飽きてきた?)と言われているが、世界的には感染者数も死者数も増加傾向にある。早期開発と同時に、それが高額で金持ちしか接種できないとかでは意味がないので、誰一人取り残さずにワクチンにたどり着けるようなレベルでの開発・普及が求められている。

3.c、3.dは3.7-8に近く、将来の健康的な生活、充実した福祉体制のための投資とも言えると思う。対象国が限定されているので日本には関係ないこと、ではなく、日本でも医療従事者は足りていないし、日本の技術力をもって対象国の人に対して訓練するということも大事な問題だと思う。医療従事者でない日本人にとっても、「健康リスクに対する早期警告、リスク緩和、リスク管理のための能力強化」は必要なことだろう。栄養バランスの整った食事やら適度な運動やら定期的な健康診断とか、当たり前のことで自分自身の管理のことでも、関係ないことではない。SDGsは「誰一人取り残さない」から。自分が健康でいることがSDGsの達成に貢献することにつながる。健康経営とか健康医療、予防医療に関するサービスはこのあたりが該当すると思う。

なんとなく似ていそうなターゲットで分類してみた。防げるレベルの目の前の課題、防げるはずの病気や事故・依存症に関する課題、直接的であり将来の不幸を減らすための課題、脅威に立ち向かう準備のための課題、になるかな。キャッチフレーズとギャップがあるように見えるけど、ターゲットを集約してフレーズを考えるとこのキャッチフレーズが秀逸なのだなと思う。

目標3について考えてみたんでした。

SDGsや10年後の世界を読み解くならコレ。みんな知ってる落合氏がわかりやすくこれから注目される領域や世界動向について解説、その中でSDGsの重要性についても触れている。挿絵とか図、表が散りばめられていて落合さんの説明も丁寧、ページ数の割に気楽に読める1冊。

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