SDGs目標のターゲットを考える 15.陸の豊かさも守ろう

SDGs17目標の15番目「陸の豊かさも守ろう」海に続いて陸も。なぜ海が先なのか、海のほうが深刻なのか?順番に意味があるかはわからないけど、陸の本文は長め。「陸上生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、土地の劣化の阻止・回復ならびに生物多様性の損失を阻止する」。森林や生物といった資源を持続可能にというのは海と同じだけど、より求められるレベルが高いようにも感じる。人間が侵入しやすい分、いろいろなところで影響というか深刻な面が多いということかな。

ターゲット15.1、15.2、15.8、15.9は、2020年目標。
15.1は森林・湿地・山地・乾燥地をはじめとする陸上生態系と内陸淡水生態系、それらのサービスに対する保全・回復・持続可能な利用の確保。国際協定のもと決められた義務に則ってとあるけどこれは誰が達成状況を決めるんだろうか?
15.2はあらゆる種類の森林の持続可能な経営の促進で森林減少阻止、と、世界全体で新規植林と再植林の大幅増加。日本は未だに世界木材輸入量2位なんだろうか。
15.8は外来種の侵入防止と優先種の駆除または根絶。15.9は国や地方の計画策定・開発プロセス・貧困削減の戦略や会計に、生態系と生物多様性の価値を組み込むこと。
果たして今年中に達成できるのかこれらの目標。目標設定から5年経つことになるけど、個人的には達成しているようには感じられない。。。

ターゲット15.3は2030年までに劣化した土地と土壌を回復し土地劣化に荷担しない世界の達成への尽力。劣化した土地と土壌てのは、砂漠化、干ばつ、洪水の影響を受けた土地など。国連データによると、地球上の植生で覆われた地表面の約1/5が1999年から2013年にかけて生産性の低下傾向にあり、10億人以上の生活を脅かしている。農地の19%、森林の16%、草原の19%、放牧地の28%を含む最大2400万平方キロメートルの土地が影響を受けた。

ターゲット15.4は生物多様性を含む山地生態系の保全。これはなんでもかんでも保全するんでなく、持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の強化につながるようなもの。外来種とか、固有種の生態系を破壊するようなものは該当しない。たとえば昆虫がいなきゃ植物が受粉できないみたいな、生態系を保全するのに有益な生態系をちゃんと守ろうっていう目標。

ターゲット15.5は、15.4で保全する山地生態系の中でもより緊急度が高い、絶滅危惧種の保護、絶滅防止の緊急対策が目標。国連データでは1993年以降、世界的な絶滅危惧種のレッドリスト指数は0.84から0.74に低下している。(低いほど悪い)この生物多様性に対する脅威の主な原因が、持続不可能な農業、森林減少、持続不可能な収穫と貿易、侵略的な外来種による生息地の喪失。こうしてみると日本も例外でなく、海外に迷惑かけてる感もだいぶ出てくる。農薬を使いまくった土地で連作障害が起こったり、大量に捨てることになるのに過剰に輸入してたり、自分たちの適正をわきまえないといけない。

ターゲット15.6は国際合意に基づく遺伝資源の利用から生じる利益の公正で公平な配分の推進と適切なアクセスの推進。遺伝資源てナニモノと思ってウィキったらこれ
『現在あるいは潜在的に利用価値のある遺伝素材である。 ここでいう遺伝素材とは遺伝の機能的な単位を持つ生物その他に由来するもの(wikipedia)』
ナルホドワカラナイ。遺伝子組み換え大豆とかじゃがいも的なことかな?品種改良でたくさん収穫できるようになったものは公正で公平に分けましょう(関税撤廃?)、その栽培方法も適切にアクセスできるようにしましょうってことか?

ターゲット15.7は動植物種の密猟および違法取引の撲滅に対する緊急対策と違法な野生生物製品の需要と供給の両方への対処。違法取引が発生するのは、欲しがる人がいるから。そのほしい人への対処もっていうのは特徴的に見える。取る人だけが悪いんじゃなく、にわとりかたまごかじゃなく両方に対処が必要なんだなぁ。

ターゲット15.aは生物多様性と生態系保全、それらの持続的な利用のための資金動員と大幅な増額。15.bは持続可能な森林経営推進のための資金調達、開発途上国へインセンティブを付与するための相当量の資金動員。ふたつとも目的は少し違うけど要はお金をたくさん投入するよっていう目標。
15.cは持続的な生計機会追及のための地域コミュニティの能力向上、保護種の密猟や違法取引に対処するための努力に対する世界的な支援強化。
これからの生態系、森林を持続的にしていくための資金面、リーガル面?の強化が手段としてあげられている。

キャッチフレーズだけでみると目標14「海の豊かさを守ろう」のペアみたいに「陸の豊かさも守ろう」ってゴロが良い感じだけど、その中身は具体的に生物多様性、森林経営、絶滅危惧種保護、違法取引とか侵略について、それぞれの回復とか悪化阻止とかが目標になっているのが目標15。環境問題でよく取り上げられる「パーム油」関連はまさにこの目標に該当する。日本人の暮らしの中にも浸透している。RSPO認証のパーム油か、FSC認証の木材か、一般商材から判別するのは難しいけど、ナチュラルローソンとか?オーガニック系商品屋さんでは認証マークついた商品も売っているはずで、少々高くてもそれを選択して買うという行為の積み重ねが世界を変えると信じて動いてみる必要がある。

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SDGs目標のターゲットを考える 14.海の豊かさを守ろう

SDGs17目標の14番目、「海の豊かさを守ろう」。本文は「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」。イメージがつきやすい目標だと思う。ただし、ただ海のことだけ考えれば良い問題ではない。例えば日本では2020年7月から始まったレジ袋有料化などをはじめとする「脱プラスチック」は、この海洋資源問題につながる。ターゲットにキーワードが出てこないけど、関連する問題はたくさんある。

ターゲット14.1は海洋堆積物や富栄養化を含むあらゆる種類の海洋汚染を防止し、それを削減すること。この「あらゆる種類の」がポイントだと思う。すぐ思いつくのは、重油とか、温度とか、ゴミとか。重油問題はこの前日本の船が海外領域で座礁して重油流出したのが問題になっていた。日本ではあまり大きく報道されていないようだけど、、ゴミによる海洋汚染の最たるものが、プラスチック。クジラとか海洋生物の死体のおなか開いたらビニール袋が大量に出てきた、とかあまり珍しくない話になってしまった。ビニール袋だけでなく、5ミリ以下のプラスチック=マイクロプラスチックも、生物の体内に入って同じことを起こしている。

14.2は、海洋と沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避し、健全で生産的な海洋を実現・回復するための取り組みを行うこと。海洋資源の中で特に生態系に注力した目標。14.3は、海洋酸性化の影響を最小限化し対処すること。世界の海洋および沿岸の海域調査によれば、現在の海洋酸性度は産業革命から平均約26%増加している。大気中のCO2量が増えているが、海の中でもCO2増による酸性化が進んでいる。

ターゲット14.4は、乱獲や違法・無報告・無規制(IUU)漁業および破壊的な漁業観光の撤廃と、生物化学的特性によって定められる持続的生産量のレベルまでの回復。海洋を汚さないだけでなく、漁業に対する目標。最近日本でも、大企業の乱獲によって本来の漁場にたどり着いた魚が激減・品質が悪い状態になるなどのニュースが出ている。地球全体で、資源量と漁獲量をコントロールする必要がある。

ターゲット14.5は少なくとも沿岸域と海域の10%の保全。これはどういうことなのか、、今は10%も保全できていないのか、調べてみないとわからない。

14.6は、2020年までに過剰生産や乱獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制すること。ターゲット14.4で漁獲自体のコントロールを目標としているけど、これはその根源となる補助金を断つ目標。というかこんな補助金があるのか、と思ってしまうけども、トレードオフにつながるすぐには解決できない問題なんだろうなと思う。

ターゲット14.7は小島嶼開発途上国・後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益の増大。先進国からの提供だけでなく、開発途上国も自立できるようになろうという目標。漁獲だけでなく、観光資源としても持続可能を目指している。

ターゲット14.aは海洋技術の移転に関する「ユネスコ政府間海洋学委員会」の基準・ガイドラインを考慮した研究能力向上、海洋技術移転。14.bは小規模・沿岸零細漁業者への海洋資源・市場へのアクセス提供、14.cは「我々の求める未来」のパラ158のとおり、国際連合条約(UNCLOS)に反映されている国際法を実施し海洋と海洋資源の保全および持続可能な利用を強化すること。誰一人取り残さない=小規模・零細漁業者も取り残さない方法、アクセスだけでなく技術も。

これらの活動の結果を受けて、保護を受ける海洋生物多様性水域は広がってきており、重要な海洋生物多様性水域は2000年30%から2018年44%へと拡大している。これでとどまらず、より高い目標の達成が望まれる。
海資源に関する目標群。自分は内陸生まれで今の仕事も直接海に関係しない、少し縁遠くも感じる目標。だけど、無意識に捨てたプラスチックが風化してマイクロ化して海に流れ着いて海洋資源を汚染している可能性は大いにある。スーパーで買う魚の出どころが適正かどうかを知るすべは今の時代はまだ難しいけど、自分の生活によって発生するゴミの行く末はイメージすることができる。小さいことから変えていけると良いなぁ。

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