SDGs目標のターゲットを考える 8.働きがいも経済成長も

SDGs17目標の8番目、「働きがいも経済成長も」。目標1~6が「発展途上国向けイメージが強い」(過去に書いた記事のとおり、発展途上国の概念は今は適切でないんだけどアジェンダの表現がこれなので)のに対し、目標8は先進国向け目標のイメージが強い目標のひとつ。本文は、「包摂的で持続可能な経済成長およびすべての人の完全で生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」で、先進国だけでもなくやっぱりすべての人なんだなと思える。日本のIT企業が重点課題=マテリアリティとしてあげたがる目標のひとつでもある。働きがいっていう広い概念でもあるので、ターゲットも10+2個と多め。

ターゲット8.1は国ごとの基準で見ての一人当たり経済成長率の持続という、ハードル高めな目標。後発開発途上国においては年率7%っていうかなり高そうな目標。コロナの影響で達成までの道のりが遠のいてそう。

ターゲット8.2-3は、持続的な経済成長を達成するための働き方や政策促進をもとに、大企業だけでなく中小零細企業の支援を目標としている。高付加価値セクター、労働集約型セクターへ重点を置くこと、多様化や技術の向上、イノベーションの実現や雇用創出・企業・創造性・イノベーション支援や金融サービスへのアクセス改善など、具体的な課題や支援策が盛り込まれている。IT企業、金融業界が選びやすいターゲットでもある。

ターゲット8.4は「持続可能な消費と生産に関する10カ年計画枠組み」にもとづく経済成長と環境悪化の分断を図るという目標。これこそ先進国の大企業とかIT企業とかが選んでも良いんじゃないかと思う。第三次産業革命からこれまでの発展は環境を置き去りにしてきており、経済発展=自然環境悪化はセットだった。これを分断しよう、経済発展と自然環境保護を両立させようというのがこの目標。先進国主導のもとという言葉も明記されており、日本はより自分事で考える必要がある。

8.5以降、8.8までのターゲットは国・企業の経済成長や生産性からぐっと人の話に寄っている。対象は、健常者だけでなく若者、障がい者、奴隷、こども、移住者、女性、不安定な雇用状態にある労働者とまさに「すべての人」。生産的な雇用や人間らしい仕事と同一労働・同一賃金や(8.5)、就労就学職業訓練を行う人の割合増加(8.6)、強制労働根絶・奴隷制や人身売買、児童労働の禁止・撲滅(8.7)、労働者の権利保護や安全・安心な労働環境促進(8.8)と、人間らしい働きがいにつながる環境も整備していこうという目標。文章が長くて難しい表現もあるけど丁寧にみるとわかる。人身売買とか日本ではあまり関連なさそうだけど、ひとり親世帯や非正規雇用者はコロナ禍においてリストラや休業のマイナス影響をたくさんくらった、不安定な雇用状態にある労働者と言え、日本でも解決が迫られている問題である。

ターゲット8.9では持続可能な観光業促進が盛り込まれ、「雇用創出や地方の文化振興・産品販促につながる」という視点は地方創生にもつながる目標になっている。日本の地方自治体や社会企業家がターゲットとしやすい、取り組みやすい目標でないかと思う。

8.10のターゲットは金融機関の能力強化を通したすべての人への金融アクセス促進・拡大が目標となっている。フィンテックの進展によって、銀行がなく貯金の概念がない地域においてはスマートフォンをつかったモバイル金融が普及しつつある。日本においては災害時でも資産が守られ、停電時でも金融サービスにアクセスできる状況となるとまだ課題が残っている。銀行や保険など金融業界は取り組みやすい目標と思える。

8.aーbは、「貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)」の支援や「国際労働機関(ILO)」の仕事に関する世界協定の実施など、既存のフレームワーク活用をさらに進めることで、後発開発途上国や若年雇用につながる未来投資の手法が目標になっている。

目標8はジャンル分けも少し難しいけど、ひとつひとつ読んでいくとなんとなくわかってくる。日本企業は社内の経営基盤強化施策のひとつとしてこの目標を取り入れる傾向があるように思う。企業の社員の働き方改革やコロナ禍のニューノーマルと言われる施策でこの目標が取り上げられることが多い。労働組合関連や同一労働同一賃金のターゲットもあるから考えやすいのだろうな。事業としてやっている例でいうと、目標6の記事に書いたLIXILのトイレを地方で作る体制を整えることで現地に雇用を生んだりっていうのがこれに該当すると思う。自社内に閉じた目標でなく、こういう社会課題を解決しながら事業にするものをぜひ積極的に考えたい。

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SDGs目標のターゲットを考える 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに

SDGs17目標の7番目は「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」。正式には、「すべての人の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」。化石燃料エネルギーでなく、安全で持続的に使うことのできる再生可能エネルギーを安価に提供してみんなで効率よく使いましょうっていう目標。

国連データでは、2000年から2016年までに、世界の電器にアクセスできる人の割合は78%→87%に増加している。電気がない生活をしている人の数は10億人を下回り、改善が進んでいる。

ターゲット7.1は、2030年までに、安価かつ信頼できる近代的なエネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保することがあげられ、ほぼ本文と同じ目標になっている。近代エネルギーとは化石燃料に頼らない再生可能エネルギーを指している。太陽光、風力、地熱、バイオマス、波力など現在さまざまな再生可能エネルギーの研究と普及が進んでいる。2016年時点のデータでは、世界の4割を占める30億人が、大気汚染につながる燃料やストーブを使って調理しており、課題になっている。原子力発電はCO2を出さないという点ではクリーンだけど、3.11の福島原発事故やその他原発関連の事故を見ると、その排水処理や使用済み核燃料の処分は持続可能でないことが分かったと思う。「信頼できる」エネルギーとは、大気汚染だけでなく人体への安全という意味も含まれている。有名な事例はパナソニックの「ソーラーランタン10万台プロジェクト」とか。

ターゲット2はエネルギーミックスによる再生可能エネルギーの割合の大幅拡大。上述した様々なエネルギーを組み合わせていこうという目標。ちなみに日本でも太陽光パネルの普及が進んでいるけど、まだ火力発電が占める割合が多く、少し前のニュースでは火力発電所に出資しているメガバンクが世界のメガバンクから叩かれ、出資を抑えられることがニュースになった。ESG投資のネガティブスクリーニング(ESGに悪影響を与える企業に投資をしない行動)の結果。

ターゲット7.3はエネルギー効率の改善率の倍増を目標としている。これは少しイメージが湧きづらいけど、最小資源で最大のエネルギーを出せるような感じかなぁ。効率が良くなれば、単位当たりのエネルギー費用が下がるので、安価に普遍的にアクセスできるようになるということだと思う。太陽光とか風力とか、再生可能エネルギーのエネルギー変換率はあまり良くないと聞いたことがあるのでこれをイノベーションで改善させようということか。

7.aは、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資促進、7.bではすべての人に近代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるようなインフラ拡大と技術向上があげられ、ともに持続可能なエネルギー提供の仕組みづくりについての未来投資が目標になっている。

目標7は他の目標に比べて少なめなターゲット数だけど、世界中の人へのアクセスを達成するには大規模なイノベーションや施策が必要になる。個人でできることでいうと、まずは使いすぎないこと、あとは電力自由化になっているので、再生可能エネルギーの売電をしている事業者に電気代支払先を変えるのもひとつの手段。ESG評価のポジティブ面(ESGに貢献している事業者への投資)とネガティブ面(ESGに悪影響を与える企業への支払い拒否)で個人の意思を示すことができる。

日本はエネルギーを安価に安全に使っており生活を送るうえで大きな問題はないが、上述したようにその生産方法は化石燃料に頼る部分が多く、課題である。また、災害時の脆弱性は水と同じく、毎年台風や豪雨で多くの地域が停電被害にあっていることも課題である。安価で信頼のできる近代的エネルギーに普遍的にアクセスできるというのはとてもレベルが高いことなんだなぁと思う。

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SDGs目標のターゲットを考える 6.安全な水とトイレを世界中に

SDGs17目標の6番目は「安全な水とトイレを世界中に」。正式な目標は、「すべての人の水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」。タイトル通りの目標。国連データによると、世界中で10人に3人が安全に管理された飲料水サービスが受けられておらず、10人に6人が安全に管理された衛生サービスを受けられていない、さらに8億9200万人が屋外排泄を続けている(2015年時点)。

人間の生活には水が欠かせない、その水の安全性が担保されていない人たちがたくさんいる。汚れた飲料水は感染症やその他病気を引き起こし、健康(目標3)を損ねる要因になる。また排泄の安全性は衛生面(目標3)や治安(目標16)にも関わる。安全な水やトイレへのアクセスが容易であること、安価であることは、たくさんの人に健康や平和をもたらす。目標6では、そのような水資源や衛生面に関するターゲットがならぶ。

ターゲット6.1は、安全で安価な飲料水への平等なアクセスを目標としている。日本の水道水の安全性は世界で見ても高レベルで、水道水をそのまま飲むことができる7つの国のひとつである。世界に目を向けると、安全に管理された飲料水を飲むことができない人も3割ほどおり、ジュースよりも水のほうが高い地域もある。安全で低価格な飲料水を誰でも飲むことができる状態を目指しているのがこの目標。日本は問題ないと思われそうだけど、日本の水道管設備は全国的に老朽化が激しく、更新工事が追い付かないと言われている。今後地域の過疎が進み、行政の財政難により水道設備の更新作業ができなかったり、過疎エリアに暮らす家までの水道インフラの整備ができないようになると、「すべての人の平等なアクセス」は達成できないことになる。海外の貧しい人の問題でなく、日本全国で直近で起こる問題なので真剣に考えなければならない。

ターゲット6.2は下水施設・衛生施設へのアクセス。屋外排泄をなくすことが目標。そしてより具体的に、女性と女児、脆弱な立場にある人々のニーズに特に気を付けるとある。屋外排泄はそこから流れたモノが川や整備されていない水路に流れ込み、下流にいる人がそれを飲み水として取水する、そして感染症などが発生するといったことが起きている。また、紛争地帯や女性の安全が確保されていない地域では、排泄時の無防備な状態を狙われることもあり、治安が悪いところでは命がけの行為でもある。日本においても、水道設備と同様、下水設備の老朽化は発生してくるので、6.1と同じような注視が必要だろう。数年前にLIXILがユニセフと共同で作った「SATO(Safe Toilet)」が話題になった。このターゲットの解決を目指して作られた製品。アジアやアフリカへ寄付し環境改善活動をしていたが、最近では各地域でこのSATOを生産する体制をつくり、現地の雇用を創出し(目標8)、安価で地域に販売しているらしい。

ターゲット6.3、6.4では、排水・投棄・汚染された水の排出を最小限にしたり再生利用できるようにすることで、世界的に水質を改善すること、また水の利用効率を大幅に改善して、持続可能な採取ができるようにすることが書かれている。地球にある水のうち97%が海水で3%が淡水らしい。この淡水を飲料水や農業・工場用水などで使っている。これから人口がさらに増えていく中で、必要とされる水の量も増えていくが、これまでと同じ使い方ではすぐに水不足になってしまう。というか水不足はすでに発生している。水質改善や汚染水輩出最小化には、イノベーション(目標9)が必要な領域に思える。

6.5には、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施することが記載されている。日本の場合は独立した島国なので、他の国と比べてあまり問題が起きにくいところかもしれない。大陸でつながっている国では、川や山で国境が分かれていたり、川の上流と下流で国境を跨いでいるような地域もあると思う。この統合水資源管理は、そういうことじゃないかなぁと推察。

ターゲット6.6では目の前の水資源だけでなく持続的に確保することも意識した未来向けの目標になっている。「山地、森林、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復」はそのまま、今だけでなく将来への持続性を考慮した目標と言える。また水資源だけに注目するのでなく、「生態系」とすることで水資源に影響を与える動植物の存在も同時に大事にしようという想いが伺える。木や草は水の中に酸素を取り入れたり浄化したりする。プランクトンや水系生物は水をきれいにしたり、自然の摂理を存続させる大事な要素である。外来種を持ち込まない、繁殖させない、など固有種への対処も含まれる課題だと思う。

ターゲット6.aでは、これらのターゲットの解決に向けた各国取り組みの中でも後手を取る地域が現れないよう、組織的な能力を向上させる(キャパシティ・ビルディング)支援や国際協力を進めることが目標になっている。また6.bはこれら「水と衛生に関わる分野の管理向上への地域コミュニティの参加を支援・強化する」ことが盛り込まれ、個人というよりも組織全体、地域全体の課題としてとらえること、それを支援することが志向されている。

世界的な課題として捉えると、日本に関係ないと思いがちになるけど、日本の社会インフラ一斉老朽化は何年か前から社会課題として認識されている。災害が発生すると断水が発生する状況も、残念ながら毎年起きている。これも持続的とは言えない。個人でできる行動としては、まずは無駄に水を使わないこと、あとは下水処理に負担のかかるものを流さないとか。もう少し考えると、適切な水資源利用で作られた製品を購入するとかもあるかもしれない。Tシャツ1枚に何百リットルてレベルの水が使われているとか、知識を得て行動に変えるのもひとつかもしれない。

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SDGs目標のターゲットを考える 5.ジェンダー平等を実現しよう

SDGsの17目標5番目は「ジェンダー平等を実現しよう」。正式には、「ジェンダー平等を達成し、すべての女性と女児の能力強化を行う」。この目標は少し賛否が分かれるところだなぁと思ってみている。そもそもジェンダーって、ウィキペディア先生には

ジェンダーは多義的な概念であり、性別に関する社会的規範と性差を指す。性差とは、個人を性別カテゴリーによって分類し、統計的に集団として見た結果、集団間に認知された差異をいう。ジェンダーの定義と用法は年代によって変化する。ジェンダーという概念は、性別に関して抑圧的な社会的事実を明らかにするとともに、ジェンダーをめぐる社会的相互作用をその概念自身を用いて分析するものである。

とある。
なにやら難しいけど、個人的見解としては、要は社会的に自分がどっちの性別で見られるかと、自分自身が感じる性とのギャップ。
この「社会的にどっちに見られるか」ってとこが賛否のポイントなのだろうなあと思う。LGBT界では一般的?になってる概念「性別はグラデーション」。
ただこのSDGsでは、そのあとに「女性の能力強化」とあるので意味合いが違ってきていると思う。LGBTの話は別の機会に。

日本でも世界でも、男女の格差はとても大きい。この問題に関しては日本は後発すぎるほど進展していない。先日の五輪旧会長の発言も然り、ジェンダーギャップ指数の世界ランクも2020年121位と、ビリケツレベル。もちろんG20なんかの中では断トツ最下位。会社の女性管理職比率とかは有名な話、地方に行くと未だに女性の教育機会がないとかある。世界で見ても、男の子は学校に通うけど女の子は水汲みに行ってて学校いけない、などから始まり日本同様、子育て家事は女の仕事で立場弱いなど、問題は多い。それを解決しようというのがこの目標5番。

ターゲット5.1では、助成及び女児に対する「あらゆる形態の差別を撤廃する」ことがきていて、あらゆるっていうところに、目標1「貧困をなくそう」の「あらゆる形態の貧困をなくす」と同じ重さを感じる。5.2-3は日本ではちょっと遠い印象だけど、人身売買・その他搾取・未成年者の結婚・早期結婚・強制結婚・女性器切除などの暴力や有害な慣行を撤廃することを目標にしている。表現からでも切実というか、え、そんなことあるのって思うことが(主に女性器切除)書かれているあたり、自分が知らないだけで深刻な課題なんだと思う。電車の広告でも、「10歳で結婚」とかあるけど想像がつかない。。

ターゲット5.4は日本のこと見て作ったんですか?と思うような、「無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価」することが目標になっている。評価するのが夫とかの主観でなく、「公共のサービス、インフラおよび社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて」というあたり、日本の状況に応じて誰がどう判断するのかはわからないけど、公共・社会保障政策などなど変容の余地が十二分にあるところだと思う。これは何も、夫が半分ちゃんと育児家事せいっていう話だけではなく、世の中には家事代行サービス等を生業にしているひとたちもいるわけで、家事にきちんと対価を払ってそれをやってもらうということも、「無報酬の認識・評価」なんでないかなと思う。金かけてっていうのはもちろん金持ちにしかできないことだけども、そこをもっとサービス受けやすくすることが公的支援のなせるワザかもしれないよね。

ターゲット5.5はこれもまた日本の話ですか、みたいな女性管理職の話。「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において完全かつ効果的な女性の参画と平等なリーダーシップの機会を確保する」。最近仕事でIT企業大手の統合報告書を分析してるけど、女性比率のまぁ少ないこと。女性管理職比率、世界で見ると24%ほどでまだまだ足りないと言われている中、日本平均は17%、今分析している企業群は、10%いくかいかないか程度。役員・監査に女性が一人もいない会社もある。そんな会社が重点項目でこの「ジェンダー平等」を掲げて多様性・働きがいのある会社って堂々と言ってたりする。SDGsウォッシュの絶好の標的になるなぁと思う。

ターゲット5.6には、「性と生殖に関する健康および権利への普遍的アクセスの確保」があげられている。これはそもそも無計画な人員増加で不幸な子を増やさないようにということなんだろうか。。NOと言える勇気、のまえに何がNOかを知識としてつけるため、ということなんだろうか。北京行動綱領を見れてないので、見てみなければ。

5.a-cは、女性や女児がその力や権利ちゃんと行使できる環境を整えましょうという施策が並ぶ。経済的資源についての権利・オーナーシップ・土地その他の財産・金融サービス・相続財産・天然資源にアクセスする権利や(5.a)、能力強化のためのICTをはじめとする実現技術の活用(5.b)、適正な政策や拘束力のある法規(5.c)がそれにあたる。あらゆる面で女性が不利にならないような環境を整備しましょうという目標。

先日、とある会社のSDGs研修を見たときに「女性の『能力強化』という表現に違和感がある。能力が劣っているわけではないでしょ」という意見があった。まぁ確かにと思い。この「能力強化」という訳、英語ではエンパワーメントと書いており、能力強化と別の意味では「権利をもつ」という表現もあった。おそらくこっちの和訳のほうがあっているというか、誤解は生まないのかもなぁと思った。教育による能力開発の機会が、男性に比べて得られていないことから「能力開発」という表現を使っている可能性もあるけども。男性と同じように持つべき権力を正しく行使できるようにするというのがSDGsで目指したい世界なのではと思う。

ここまで来て最初の話に戻ると、SDGsのキャッチコピーや正式目標では「ジェンダー平等」と言っているけど、ターゲット全般、主役は「女性および女児」と明記されているのが特徴。誰から見ての女性および女児か?まで定義されておらず、LGBT界はこの目標に性的マイノリティを当てはめているところもたくさんあるけど、個人的には性的マイノリティに対する課題はSDGsに正しく盛り込まれていないと感じる。これはまた別の記事で。

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SDGs目標のターゲットを考える 4.質の高い教育をみんなに

SDGs17目標の4つ目は「質の高い教育をみんなに」。正式な目標は、「すべての人々に包括的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」。教育は未来投資につながる重要要素。目標1~3で目前の命や健康の安全性が保たれた次に大事だとするこの流れには共感する。(SDGsは貧困があらゆる課題の根幹と言っているけど、目標の中でどれが一番とか大事な順とかって優先順位つけたりはしてないはずです)。

ターゲット4.1から4.6にかけては、年齢というか教育段階に分けて、男女関係なくすべての人が基本的・発展的な教育を受けることができる体制を整えたりそのケアをするという目標。国連データによると、世界における幼児期と初等教育の就学率は、2010年63%→2016年70%に改善している。それでもまだ地域によっては満足な教育機会が与えられていないこどもがいる。またこの目標群には大人も該当しており、職業訓練や人間らしい仕事に必要な教育も含まれる。どのようなレベルに対しても、教育を望む人にその機会を提供できるようにするのがこのあたりのターゲットになっている。

基礎的、最低限の教育が行われないことは、様々な問題を引き起こす。健康面では識字率が低いことによって、自分や大切な人に処方された薬を適切に服用することができなかったり、農薬などをどの程度撒けば良いのかわからず薬害被害にあったりといったことが起こる。また、仕事の面でも、就学していた人と比べて就労機会や選択肢が狭められる。仕事に就けない人は最悪の場合、戦争の兵士やテロリストの組合員になってしまうこともある。そのようなことを防ぐためにも、教育はとても大事な要素である。上杉鷹山が行った人づくり改革も教育だった。鷹山公は米沢藩のこどもに士農工商の階級分け隔てなく教育を施した。そこからその後の米沢や日本を作った偉人がたくさん輩出されている。社会の改善に、教育は必須要素だと思う。

ターゲット4.7では、「持続可能な開発のための教育」を行うことを目標としており、SDGsの概念を現代世代だけでなく次世代以降にも引き継ぎ、持続可能な社会を代々つないでいきたいという想いが伺える。このターゲットでは持続可能な社会に必要な要素として具体的に、「人権、ジェンダー平等、平和と非暴力の文化、グローバル市民としての自覚、文化の多様性への尊重、文化が持続可能な開発にもたらす貢献」について理解しそのような社会を促進するための知識やスキルをつけるとある。日本の教育機会の中でいうと、道徳にあたるのか総合にあたるのか、、最近の指導要領とか時間割がわからないけど、小学校では社会や英語の教科書に盛り込まれつつあると聞いた。もしかしたら国語算数理化社会英語SDGs、って時間割の1コマになる日もくるかもしれない。

ターゲット4.a-cでは、数字ターゲットを実現するために必要な手段として、すべての人が安全に学ぶことのできる教育環境の提供(4.a)や、貧困状態の人や公的教育機関等だけではまかないきれない資金援助としての奨学金の件数向上(4.b)、適切な教育を行うことのできる教員の増加(4.c)があげられている。たしかに、先生が教えられることがなかったら教育にならん。

教育は自分も興味がある分野。中高の免許は失効してしまっている気がするけども。。。美術免許だけではあるけど、アートという文化がなぜ必要や、生活にどんな影響を及ぼすか等知ることは大事じゃないかなぁと思う。芸術作品をつくるにも最低限の教育は必要なので、国語算数とかに比べると優先順位が低くなるという現実(ゆとり教育で時間数を減らされていった科目のひとつが図工・美術)が悲しい。芸術は質の高い文化教育なのかもしれないけど、それこそみんなに、機会があったら良いなーと思う。絵が上手く描ける必要はないけどたとえば会話のきっかけになるとか、ものの見方がわかるみたいな。あと道具を正しく使えるかとか。

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SDGs目標のターゲットを考える 3.すべての人に健康と福祉を

SDGs17目標の3つ目は「すべての人に健康と福祉を」。個人的には、キャッチフレーズとターゲットのギャップが大きい目標ベスト1。キャッチフレーズや正式な目標「あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を促進する。」から連想すると、健康経営とか福祉(子育て、介護、障がい者)の充実をイメージするけど、もちろんそれ関連のターゲットもあるけど、それより重視していることがたくさんある。

まず3.1、3.2のターゲットは、妊産婦・新生児および5歳以下の死亡率低下。世界では医療体制が整っていないため、妊婦が安心安全に子供を産める状況にない地域があり、そこではいまだに妊婦・新生児ともに命の危険がある。5歳児未満の予防可能な死亡(ワクチン接種で回避できる感染症など)は2000年990万人から2016年560万人まで減少しているものの、まだたくさんの救える命が救えていない状況。このターゲットは数値目標もついていて、より具体的・野心的と言える。

<a href="https://pixabay.com/ja/users/kfuhlert-977338/?utm_source=link-attribution&amp;utm_medium=referral&amp;utm_campaign=image&amp;utm_content=1215279">Katja Fuhlert</a>による<a href="https://pixabay.com/ja/?utm_source=link-attribution&amp;utm_medium=referral&amp;utm_campaign=image&amp;utm_content=1215279">Pixabay</a>からの画像
Katja FuhlertによるPixabayからの画像

ちなみに日本でも、ターゲットの数値目標は達成しているとはいえ乳幼児の突然死や寝返りに気づかず窒息死などが社会問題になっている。

ターゲット3.3は伝染病の根絶と感染症への対処。3大伝染病のエイズ、結核、マラリアもいまだ根絶できておらず、マラリアに至っては2013年から2016年にかけで患者が増加している。温暖化が進み、マラリアの媒介になる蚊の生息地に変化が起きた場合、これまでマラリア被害のなかった地域でも発生する可能性がある。住友化学が、防虫成分入りの蚊帳をつくりアフリカへ展開するなどのイノベーション・社会課題解決事例も出ている。
またこのターゲットは、新型コロナウィルスもしっかり該当する。新型ウイルスが経済、環境、社会に及ぼす影響はここで言うまでもないかと。いつか整理したいけども。

ターゲット3.4、3.5、3.6、3.9と3.aあたりは現代?近代?特有の課題かなと思ったけど、昔からあるっちゃあることかも。3.4では非感染症疾患、3.5はアルコールを含む薬物乱用、3.6は交通事故死傷者、3.9は有害化学物質や環境汚染による死亡・病気件数をそれぞれ減少させることを目標にしており、3.aではたばこ規制枠組み条約の実施強化が盛り込まれている。3.4は感染症以外の疾患と考えるとめちゃくちゃ広い話になるけども、「精神保健および福祉を促進」から見ると、精神を病む人や自殺者削減もここに該当すると思う。タイヤメーカーが3.6の達成を掲げて事業していると聞いたことがあるけどこれは事業活動を通じた社会課題解決につながる事例だと思う。3.aのたばこ産業の市場規模は巨大だと聞くけど、JTはこれからどう事業を展開していくのか、気になるところ。あとはアルコールもたばこも、国が税金をかけている部分なので税収増やしたい国との折衝というか権力争いのようなことも起きそうだなと思う。2020年10月からはたばこと第三のビールが値上げになった。主幹産業および貴重な税収減と、SDGsの課題解決とのバランスがどこに着地するか?

ターゲット3.7や3.8は、性と生殖に関するヘルスケアの利用(3.7)や基礎的なヘルスケア・サービスへのアクセス、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(3.8)など、個人の人生設計の上での家族計画に関する情報や教育を行うことや、必要なときに適切な医療にアクセスできることが目標となっている。ターゲット3.1が目の前の課題への対応策とすると、この目標はこれから先3.1や3.2の状況になる総数を減らすような取組みだと思う。個人が尊重され自由な人生設計の中で子供を産む/産まないという選択肢がない人がたくさんいる。自分の、または子供や家族の具合が悪いときにすぐに医者に診てもらえる状況にない人たちがたくさんいる。医者が処置すべきは病院に来ることのできる目の前の患者だけでなく、病院に来ることができない人たちや、その環境にある。っていう考え方でアフガニスタンで殺された中村医師は医者業をしながら水路を引き、砂漠を緑豊かな畑に変えた。FACTFULNESSの著者も同じような考えだった。アクセスとは単に道路とかインフラの話でなく、情報だったり治療にかかる値段だったりも含まれる。薬に書いてある文字が読めるかどうかって話は次の目標の話で。ちなみにFACTFULNESS、家族の共著、お父さんがメインに進めてきたけど発行直前にお亡くなりになってしまった。彼の自伝に近いタッチで読みやすく、人生に絡めて事実と認識の違いや正しく事実を捉えることの大事さがわかりやすい1冊。

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ターゲット3.bはワクチンや医薬品の研究開発への支援とそのアクセスについて言及しており、これも新型コロナウイルスのことが当てはまる。新しい生活様式による暫定対応もあるけど、ワクチン開発とか世界中が今ここに集中投資して研究を進めているところだと思う。最近日本では感染が落ち着いている(慣れてきた、飽きてきた?)と言われているが、世界的には感染者数も死者数も増加傾向にある。早期開発と同時に、それが高額で金持ちしか接種できないとかでは意味がないので、誰一人取り残さずにワクチンにたどり着けるようなレベルでの開発・普及が求められている。

3.c、3.dは3.7-8に近く、将来の健康的な生活、充実した福祉体制のための投資とも言えると思う。対象国が限定されているので日本には関係ないこと、ではなく、日本でも医療従事者は足りていないし、日本の技術力をもって対象国の人に対して訓練するということも大事な問題だと思う。医療従事者でない日本人にとっても、「健康リスクに対する早期警告、リスク緩和、リスク管理のための能力強化」は必要なことだろう。栄養バランスの整った食事やら適度な運動やら定期的な健康診断とか、当たり前のことで自分自身の管理のことでも、関係ないことではない。SDGsは「誰一人取り残さない」から。自分が健康でいることがSDGsの達成に貢献することにつながる。健康経営とか健康医療、予防医療に関するサービスはこのあたりが該当すると思う。

なんとなく似ていそうなターゲットで分類してみた。防げるレベルの目の前の課題、防げるはずの病気や事故・依存症に関する課題、直接的であり将来の不幸を減らすための課題、脅威に立ち向かう準備のための課題、になるかな。キャッチフレーズとギャップがあるように見えるけど、ターゲットを集約してフレーズを考えるとこのキャッチフレーズが秀逸なのだなと思う。

目標3について考えてみたんでした。

SDGsや10年後の世界を読み解くならコレ。みんな知ってる落合氏がわかりやすくこれから注目される領域や世界動向について解説、その中でSDGsの重要性についても触れている。挿絵とか図、表が散りばめられていて落合さんの説明も丁寧、ページ数の割に気楽に読める1冊。

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SDGs目標のターゲットを考える 2.飢餓をゼロに

SDGsの17目標2つ目は、「飢餓をゼロに」。このキャッチフレーズだけ見ると、目標1の「貧困をなくそう」と似ていると思われそう。正式文章を見ると、違いがわかりやすい。「飢餓を終わらせ、食糧安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。」これが正式な目標2。飢餓だけを言ってるんではなく、食料の安全性や農業について言及した目標であることがわかる。

貧困は健康や教育、就業などあらゆる面で影響を及ぼすけど、一番直結で影響を及ぼすのが飢餓。貧困をなくすことはもちろん最大の課題としたうえで、生命を一番脅かす飢えをなくすというのが目標2で解決しようとしている課題。

これも、キーワードだけパッと見ると日本には関係ないことに思えるけど、正式文章まで見ると、関連することがわかってくる。食品偽装、産地偽装、賞味期限改ざんや衛生管理に関する事件は毎年発生しているし、高齢化・生産人口減少の影響がいち早く訪れている農業の持続可能性が危ぶまれているのは昔から言われていること。

目標2のターゲットには、1年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにすること(2.1)や、5歳未満のこどもの発育阻害や消耗性疾患の課題を解決すること、あらゆる形態の栄養不良を解消すること(2.2)など、貧困が起因になる飢餓の解決を目指す一方、小規模食料生産者の農業生産性や所得を倍増させること(2.3)、持続可能な食料生産システムを確保して強靭な農業を実践する(2.4)など、これからの人口増加を見据えた食料生産体制の整備も視野に入っている。

日本をはじめとするいわゆる昔の先進国では、人口減少が大きな課題となっているが、世界的には人口は増加している。昔よりも技術が進化し所得が向上し先進技術が安価に普及できるようになり、極度の貧困状態にある人の数が減り、世界的な平均寿命が延びている。2050年までに、日本では9000万人まで減少するといわれている中、世界では90億人にまで増えると言われている。(今のままの生活では持続不可能と言われる所以でもある)

人口がいまより20億人以上増えると言われている中、今と同じ食糧生産体制では食料不足になることが見えているのが、2.3以降のターゲットに課題として表出している。

ターゲット2.5は種子・植物バンクを通じた遺伝資源と関連する伝統的知識へのアクセスやその利益の公正・公平配分が記載されており、1次産業の高度化も考慮に入れている。

1次生産者のIT化・工場野菜等の技術やその研修が急速に発展、普及していることも目標2に関連している。日本の農家の高齢化や後継者不足、生産緑地問題、生産者の定収入問題なども関連する。

農業は自分も関心が高まっている領域。IoTを使った生産管理は製品やアプリが乱立している状態。プラットフォーマーを目指すなら大企業なんだろうけど、スマートシティ構想に組み込むのも大企業なんだろうけど、通信技術がもっと発展して通信料が安価になり通信量が増えれば、今時点での業務アプリからライブ型情報発信型・エンターテイメント型になってくと思う。一部すでにできてきてる。そこまで見えてる生産者さんいたら仕事で関われたらいいなぁ。

SDGsについて第一人者の考えを知るならコレ。日本SDGsの巨匠のひとり、17目標のキャッチフレーズを考えたり、グローバルすぎて日本人にイメージしづらいターゲットを日本人向けに新訳している方。新訳も掲載されている。

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